2月9日、中国では特別番組「春節連歓晩会」(通称:春晩)が放送されました。再放送も合わせると10億人以上が視聴するという怪物番組であり、親子三世代がテレビの前に集まって視聴することも多いこの番組の広告枠を利用し、スマートフォンやアプリケーションを提供する企業が新規ユーザー獲得を実現しています。中国ではほかにも、デジタルな情報が届きにくい「下沈市場」「銀髪経済」向けの宣伝を行うため、ユニークなアドテク(広告技術)が次々に生まれています。本稿では、日本企業にも重要な示唆を与え得る中国の最新アドテクについて、国際的なテック事情に詳しいジャーナリスト・高口康太氏が解説します。
農村のレンガ壁に「最新スマホのペンキ広告」を出稿?…新興国の開拓にイノベーションを起こす、中国発“アドテク”の新展開 (※写真はイメージです/PIXTA)

 ※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

スポンサー広告が目立つ「中国版紅白歌合戦」

(画像はイメージです/PIXTA)
(画像はイメージです/PIXTA)

 

「さあ、スマホにあるJDドットコムのアプリを開いてシェイクしてください。抽選が始まりますよ。わずか0.1元(約2円)でステキなギフトが購入できます!その数なんと1億点。30億元(約600億円)のお年玉もあります」

 

これは2023年2月9日に放送された、中国中央電視台(CCTV)の特別番組「春節連歓晩会」(通称は「春晩」)の一幕です。歌、コント、マジック、カンフーなどが詰め込まれた内容ですが、再放送も合わせると10億人以上が視聴するともいわれる怪物番組です。毎年、旧暦の大みそかに放送されるため、日本では「中国版紅白歌合戦」として紹介されています。

 

日本の紅白歌合戦と大きく異なる点は広告の多さ。番組途中に挿入される一般的なコマーシャルはない代わりに、スポンサー広告が目立ちます。

 

コントの一場面をみてみると、ソーシャルメディア「RED」のアイコンをかたどったクッションが置かれていたり、背景の壁に「チャイナモバイルの光回線で高速インターネットを楽しもう」というポスターが貼られていたり、会場参観者に配られた大手飲料メーカー・ワハハの飲み物が画面に映っていたり……という具合です。

 

こうした広告のなかでも目玉的な扱いをされているのが、EC(電子商取引)大手のJDドットコム。番組中に7回の抽選タイムがあり、そのたびに冒頭で紹介したメッセージとともにキャンペーンが紹介されます。

 

EV(電気自動車)や洗濯機、パソコンなど1億点もの商品がわずか2円で購入できる権利や、約600億円のお年玉(電子マネー)が提供されました。番組中にアプリを開いてシェイクすることが参加条件となりますが、延べ552億人の参加があったといいます。

 

番組中にアプリを使ってギフトやお年玉を配るスポンサー枠は「独占インタラクティブ・パートナー」と呼ばれ、2015年から始まりました。最初のパートナーとなったのはIT大手テンセントが展開するモバイル決済サービスのウィーチャットペイ。この広告を起爆剤として先行するアリペイに追いつきました。

 

以後、EC大手のアリババグループや検索のバイドゥ、ショート動画のクワイやバイトダンスといった大手IT企業が次々に登場し、自社サービスをアピールする場となっています。