日本の社会は、ICTを活用して少子高齢化やインフラ老朽化などによって生じる諸問題を解決しながら、街が新たな価値を生み出し続けるための「スマートシティ構想」を進めています。この構想の実現に不可欠とされるのが、交通や医療機関など、分野を超えて集積・分析した情報を活用するためのプラットフォームである「都市OS」です。21年度末までに累計46の地域が都市OSを導入しており、政府は25年度までに100の地域にこれを導入することを目標にしています。スマートシティとはどのようなものなのか、どこまで実現しているのか、本稿でその一端をみながら、ICTによって未来の街がどう変わるのか考えます。
“スマートシティ”を支える「都市OS」とは?… ICTで〈未来の街〉はどう変わるのか (※写真はイメージです/PIXTA)

顔認証カメラがビルのセキュリティ・混雑緩和に貢献

一度、ビルOSに話を戻しましょう。館内に設置されたカメラはプライバシーに配慮しながら館内の人たちの顔認識や属性認識を行って性別や年代層を把握した上で、人がどのような流れで移動しているのかを表す「人流データ」を集計し、そうした情報は各商業施設のマーケティング等に活用されています。

 

また、顔認識機能を用いて過去にこのビル内で犯罪や迷惑行為をした人物をデータベース化しておき、その人物の来館を認識すると、監視員に通知が届き注意喚起されるという仕組みもあり、ビルのセキュリティにも貢献しています。

 

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カメラ設置の例 (筆者撮影)

 

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不審者を検知した場合の監視員への通知例 監視員は不審者が見える範囲に急行して監視を行う (筆者撮影)

 

顔認証システムはオフィスワーカーの入場ゲートにも導入されています。最近はよく中層階と高層階でエレベーターが分かれている光景を目にしますが、東京ポートシティ竹芝では顔認証システムによって社員が何階のフロアで働いているかを判別できるため、たとえば、低層・奇数階で降りる社員は「A」のエレベーターに、高層・偶数階で降りる社員は「B」のエレベーターにというように、AIが最適なエレベーターへと誘導してくれます。

 

実際はAIによってもっと複雑な判別が可能で、できる限り停まる階を減らすなど、エレベーターの混雑緩和につなげています。

 

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オフィスフロアへの入場ゲートに設置された顔認証システム (筆者撮影)