ある日突然、足の親指に激痛を引き起こす「痛風」。健診などで尿酸値が高いと指摘された「痛風予備軍」の人も少なくないでしょう。痛風対策といえば「プリン体制限」が有名ですが、どれほどの効果があるのでしょうか? 本記事では米国老年医学の専門医である山田悠史氏による著書『健康の大疑問』(マガジンハウス)から一部抜粋して、プリン体制限の効果やもっと優先すべき対策について解説します。
プリン体制限よりも優先すべき「痛風対策」とは
しかし、実際には、食品を調整してもたらされる影響は(ゼロではないものの)大きくないということが複数の研究から分かってきています。
確かに、多くの食料に程度の差こそあれプリン体が含まれているわけですし、約6割は体で勝手に生み出されるものです。食事による差分があまり大きくなさそうだということは想像に難しくはないでしょう。
このため、普通の食生活を送っている人がプリン体制限をしても、ほとんど無効であることが知られています2。実際に、プリン体制限によって平均で尿酸値は1㎎/dLしか下がらないと考えられています。
また、過度のプリン体制限は、結果としてタンパク質制限につながり、食事量に変化がない場合、かわりに炭水化物や脂質の摂取量が増えて、バランスを崩した食生活をもたらすことになり、健康への悪影響が懸念されています。
このため、プリン体制限は、極端にプリン体の摂取量が多い場合以外は、推奨されることはありません。もちろん、極端に摂取量が多い場合には、痛風の原因の一端を担うと考えられますし、制限する意味はあるでしょう3。
痛風を防ぐために必要なことは、むしろ、肥満のある方のダイエット、飲酒をする方の節酒、そしてバランスの良い食生活です2。
「ビールはプリン体フリーのビールに変えればいくら飲んでも良い」なんていう話を聞くこともありますが、それも間違いです。
そのプリン体摂取の量の差以上に、飲酒がもたらす痛風発作のリスクの方が、影響が大きいと考えられるからです4。ビジネス戦略にまんまと引っかかってしまっているかもしれません。
1 Griebsch A, Zöllner N. Effect of ribomononucleotides given orally on uric acid production in man. Adv Exp Med Biol 1974; 41: 443–9.
2 FitzGerald JD, Dalbeth N, Mikuls T, et al. 2020 American College of Rheumatology Guideline for the Management of Gout. Arthritis Care Res (Hoboken) 2020; 72: 744–60.
3 Choi HK, Atkinson K, Karlson EW, Willett W, Curhan G. Purine-rich foods, dairy and protein intake, and the risk of gout in men. N Engl J Med 2004; 350: 1093–103.
4 Neogi T, Chen C, Niu J, Chaisson C, Hunter DJ, Zhang Y. Alcohol quantity and type on risk of recurrent gout attacks: an internet-based case-crossover study. Am J Med 2014; 127: 311–8.
山田 悠史
米国老年医学・内科専門医