40歳を過ぎると肺の機能が急速に衰え始めます。その結果、呼吸が浅くなって自律神経が乱れてしまうといった悪影響を及ぼします。これらの悪影響は、どうすれば解消できるのでしょうか。本記事では、順天堂大学医学部で教授を務める小林弘幸氏による著書『自律神経を守る 60歳からの正解』(マガジンハウス)から一部抜粋して、自律神経のバランスを整える「呼吸法」について解説します。
1日数回ゆっくり深く呼吸して、自律神経のバランスを整える
40歳を過ぎると肺の機能は急速に衰え始めます。横隔膜の筋力も低下して、その動きは小さくなり、どうしても浅い呼吸になってしまいます。
老化などによって失われた肺の機能はもとには戻りません。しかし、呼吸の質を変えることで、今ある肺の機能を回復させることができます。
その方法が「ゆっくり深く呼吸する」ことです。
ゆっくり深く呼吸すると、横隔膜は大きく上下に動きます。その動きが大きくなるほど取り込める空気の量も多くなり、副交感神経の働きが高まります。
反対に、速く浅い呼吸をすると、横隔膜の動きは小さくなります。取り込める空気の量も少なくなり、副交感神経の働きが低くなるということです。
つまり、いつもの呼吸を「ゆっくり深い呼吸」にするよう心がければ、副交感神経のレベルも上がり、自律神経のバランスを整えることができるのです。
また、肺には正しく動いているかどうか監視する見張り番が備わっています。それが「圧受容体(あつじゅようたい)」という場所で、肺が収まっている胸腔(きょうこう)にあります。
圧受容体は、血液中を流れる酸素や二酸化炭素の量を監視して、その情報が伝わることで血流量や呼吸数をコントロールする働きがあります。
息を長く吐くほど、圧受容体に圧力がかかり続けます。ゆっくりとした長い呼吸をすることで、血流量が増えて副交感神経の働きが高まる仕組みになっています。
しかも、全身の血液の流れがよくなってくると、硬くなった筋肉の緊張もゆるんで、体もリラックスしやすくなります。横隔膜をはじめとした呼吸にかかわる筋肉もゆるむことで、動きやすくなります。
横隔膜が動きやすくなると、低下した筋力も鍛えられるため、横隔膜の上下運動が徐々に大きくできるようになっていきます。
残された肺の機能を最大限に引き出すためには、横隔膜など肺まわりの筋肉を柔軟にする「ゆっくり深い呼吸」を意識的に行うことです。その結果、肺機能の衰えもカバーすることができ、自律神経の働きを高めることにつながります。
1日数回でも構いません。「ゆっくり深い呼吸」を習慣化しましょう。