40歳を過ぎると肺の機能が急速に衰え始めます。その結果、呼吸が浅くなって自律神経が乱れてしまうといった悪影響を及ぼします。これらの悪影響は、どうすれば解消できるのでしょうか。本記事では、順天堂大学医学部で教授を務める小林弘幸氏による著書『自律神経を守る 60歳からの正解』(マガジンハウス)から一部抜粋して、自律神経のバランスを整える「呼吸法」について解説します。
日本人の7割ができていない…「鼻呼吸」でウイルス感染を防ぐ
もうひとつ、質のよい呼吸のために大切なことがあります。それは、「口呼吸」ではなく、「鼻呼吸」をすることです。なぜなら、鼻で呼吸をするほうがウイルスに感染しにくいからです。
たとえば、鼻で呼吸すると、鼻毛がフィルターの役割をして、空気中のウイルスや細菌を取り除いてくれます。そうして、きれいな空気だけを気道や肺に送り届けることができるのです。
一方、口で呼吸すると、ウイルスや細菌を含んだ空気が、そのまま気道や肺に送られてしまうことになります。
口呼吸には、他にもデメリットがあります。
口の中には、約1,000~6,000億個の細菌がいると言われています。この細菌が増えていくと、さまざまな病気にかかりやすくなります。細菌を増やさないためには、唾液の量を減らさないことが重要です。なぜなら、唾液は、口の中の粘膜を覆って、細菌の繁殖を防ぐ役割をしているからです。
しかし、口呼吸をしていると、口の中が乾燥して唾液の量がどんどん減ってしまいます。本来、唾液の中にいる免疫細胞が細菌から守ってくれているわけですが、唾液が減ると免疫細胞も減るため、どんどん細菌が増えていきます。そこから、虫歯や歯周病など、さまざまな病気にかかりやすくなってしまいます。
また、口呼吸は喉や気道も乾燥します。喉や気道は、綿毛や粘膜に覆われていて、細菌やウイルスを排出する役割があります。それが乾燥すると、細菌やウイルスを排出する力が弱まり、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。
肺の中に直接冷たい空気が送られてしまうのも、口呼吸のデメリットです。それは、肺の免疫力が低下して、肺を痛める原因にもつながります。
鼻呼吸をすれば、冷たい空気は鼻の粘膜を通ることで温められ湿度も加わります。途中の喉を通るときにも肺に届くときにも、温かく湿った空気となって刺激を少なくします。
じつは、日本人の7割が口呼吸と言われています。無自覚で口呼吸をしている人も多いので、気になる方は一度専門家の診察を受けてみるとよいでしょう。