40歳を過ぎると肺の機能が急速に衰え始めます。その結果、呼吸が浅くなって自律神経が乱れてしまうといった悪影響を及ぼします。これらの悪影響は、どうすれば解消できるのでしょうか。本記事では、順天堂大学医学部で教授を務める小林弘幸氏による著書『自律神経を守る 60歳からの正解』(マガジンハウス)から一部抜粋して、自律神経のバランスを整える「呼吸法」について解説します。
鼻から吸って口から吐く、「1対2」の呼吸法を就寝前の習慣に
鼻呼吸には、もうひとつ大きなメリットがあります。口呼吸よりも、酸素を取り込む量が多いことです。
鼻の粘膜では、一酸化窒素というガスがたくさんつくられています。鼻呼吸をすると、この一酸化窒素が酸素と一緒に肺に送られていきます。一酸化窒素には、肺胞で血液が酸素を取り込む量を増やす働きがあります。そのため、口呼吸よりも鼻呼吸のほうが、酸素を効率よく取り込めるようになるわけです。
これは、スウェーデンのカロリンスカ研究所のヨン・ルンドベリ教授などの研究で広く知られています。
また、ノーベル生理学・医学賞を共同受賞したルイス・J・イグナロ博士は、一酸化窒素が肺に取り込まれると免疫力がアップし、細菌やウイルスなどの感染症などにも対抗できる可能性について研究を進めているそうです。
それでは、息を吐くことに関してはどうでしょうか?
鼻から息を吐くことは、鼻の粘膜でつくられた一酸化窒素を外に出してしまうことになります。一酸化窒素を最大限に取り込むためには、「鼻から吸って口から吐く」呼吸法が最も理想的と言えるでしょう。
ここまで、「ゆっくり深い呼吸」「鼻から吸って口から吐く」がよい呼吸とお伝えしました。しかし、よい呼吸を心がけていても、つい習慣となっている呼吸に戻ってしまうことはよくあります。
「上手に呼吸できない」という方のために、よい呼吸のコツを紹介しましょう。それは、「1対2」の呼吸法です。
① リラックスした状態で、3~4秒かけて鼻から息を吸う
② 6~8秒かけて口からゆっくり息を吐く
ゆっくりと鼻から息を吸ったら、倍の時間をかけて口から息を吐きます。3秒吸って6秒吐く、4秒吸って8秒吐く、どちらでも構いません。ハーとゆっくり吐けない方は、口をすぼめてフーと吐いてもよいでしょう。
まずは、1日に1分、就寝前の習慣にしてみるところから始めてみてください。
小林 弘幸
順天堂大学医学部教授