「発酵食品」を食べることは、腸内環境を整える助けになります。とはいえ、人によって腸内環境は千差万別。自分に合った発酵食品を見つけ出さなければなりません。そこで本記事では、順天堂大学医学部で教授を務める小林弘幸氏による著書『自律神経を守る 60歳からの正解』(マガジンハウス)から一部抜粋して、発酵食品、とりわけ「ヨーグルト」を摂取するコツについて解説します。
発酵食品は、「量」より「数」が大事
食物繊維と合わせてとりたいのが「発酵食品」です。発酵食品とは、微生物の働きを借りて糖質を分解(発酵)させたもの。発酵のおかげで旨味が増して食べ物がおいしくなったり、栄養価が上がったりします。
発酵食品をつくる微生物のなかでも代表的なのが、「乳酸菌」「麹(こうじ)菌」「納豆菌」「酵母菌」「酢酸菌」など。人の腸に棲む腸内細菌の仲間で、すべて善玉菌です。
腸内細菌には、仲間の細菌が腸内に入ってくると、働きを活性化させる性質があります。そのため、発酵食品を食べることで、腸内の善玉菌が活性化して、悪玉菌を抑制することができるのです。
腸の状態によって善玉菌と悪玉菌の強いほうに加勢する日和見菌が、腸内環境がよくなることで善玉菌の味方につける効果もあります。腸内の7割を占める日和見菌が善玉菌を加勢してくれたら、腸内環境はさらによくなります。
しかし、発酵食品からとる善玉菌がそのまま腸に棲みつくわけではなく、便として排出されます。だからこそ、毎日多くの発酵食品をとることが大切なのです。「多く」と言うのは量ではなく種類です。
腸内には約1,000種類、100兆個以上もの細菌が棲んでいますが、腸の状態は人それぞれ。腸内細菌の数は年齢によっても変わりますが、菌の種類は一生ほぼ変わらないことがわかっています。
腸内環境の多様性を高めて若返らせるために、同じ発酵食品でもさまざまな種類を選ぶようにしたり、複数の発酵食品を組み合わせて食べたり、より多くの菌を取り入れてみてください。
たとえば、納豆には「宮城野菌」「成瀬菌」「高橋菌」といった有名な日本三大納豆菌の他にも、全国津々浦々の納豆メーカーでさまざまな種類の納豆菌が使われています。
チーズならカマンベール、ゴルゴンゾーラは白カビ・青カビ菌、ゴーダチーズは細菌で熟成されていますし、他にもたくさんの種類のチーズがあることからも、膨大な種類の細菌が使われていることがわかります。
ぬか漬けや梅干しといった副菜はもちろん、味噌や醤油、酢などの調味料、日本酒やワイン、焼酎などのアルコール、紅茶やウーロン茶などの飲料も発酵食品です。
外食の場合でも、調味料や副菜などに発酵食品がよく使われている和食を選べば間違いありません。他にも組み合わせによっては、2~3種類の発酵食品をとることは手軽にできるはずです。
このように発酵食品にはたくさん種類がありますが、効果的にとりたいならちょっとしたコツがあります。
まずは、自分の腸に合っているものを選ぶこと。よさそうだと感じたら1~2週間続けて、便通や体調の変化を観察してください。変化がなければ違う商品に変えて一つひとつ食べ比べてみましょう。そうして、自分に合う定番を2~3個見つけて、毎日とることです。
また、定番の他に、2~3種類の発酵食品を日々の食事に追加していきます。納豆や味噌など発酵食品を加えたメインの食事に、日本酒やワイン、おつまみにサラミやピクルス、塩辛やメンマ、食後の紅茶などを付け加えてみてもよいですね。
多くの発酵食品を上手に毎日の食事に取り入れ、腸内環境を高めていきましょう。