程度の違いはあれど、ほとんどの人が頭を悩ませる「親の介護」。実際に介護がはじまると、同居している配偶者や子どもの負担が重くなりがちです。では、親の介護で同居家族の負担を減らすにはどのような対策を講じれば良いのでしょうか。76歳の父を介護するAさんの例をもとに、具体的な流れをみていきましょう。※本記事の情報は、抜粋元の書籍が刊行された2021年7月8日時点のものです。
介護協力はなるべく広範囲に打診し、負担を減らす
1.おじ、孫、親しい隣人…可能性のある人はすべて書き出す
父親が倒れた場合、その配偶者である母親が主たる介護者になるケースが一般的ですが、その他の親族でどのように介護の役割分担ができるか、幅広く考えてみることも大切です。
サポートする人が増えることで、1人あたりの負担が分散され、比較的安定した介護体制を築けることもあるからです。
まずは、[図表1]の樹形図のように、介護される人の周りの人を書き出していきましょう。ここでポイントとなるのが、子どもだけでなく、おじ、おば、孫や姪・甥、親しくしている隣人など、協力してくれる可能性のある人はすべて書き出しておくことです。
特に1人っ子の人は介護の手が不足するため、「この人は協力してくれなそう」と決めつけずに、できるだけ多くの人を書き出して、介護へのサポートを打診してみてください。意外な人の協力を得られるケースも少なくありません。
介護する人は家族に限らず広い範囲で考える
■介護をされる人の家族
……子どもだけでなく、孫、おじ、おば、いとこなどまで範囲を広げる
■介護事業者
……介護保険適用サービス提供の事業者以外、民間の事業者まで広げる
■その他
……近所の人、NPO、ボランティアなどまで範囲を広げてみる
2.協力者が決まったら、「誰が・いつ」介護できるか可視化する
介護に参加してくれる人が決まったら、それぞれの人が自由になる時間帯を[図表3]のように書き出してみましょう。誰がいつ介護に参加できるのかを可視化しておくことが、介護の役割分担を決める際に役に立つからです。
表は作成後も定期的に更新し、人数が多い場合はリーダーを設定
ただし、自由になる時間帯があるからといって介護に参加できるとは限らない点には注意が必要です。
たとえば、専業主婦で自由時間が多くあったとしても、小さい子どもがいる場合には、介護に長時間参加することは難しいかもしれません。また、それぞれ人の生活状況は刻々と変わるため、定期的な表の更新も欠かせません。
参加人数が多いと、情報伝達や意思疎通が難しくなることも。リーダー役が必要なことも覚えておきましょう。
親族だけでなく、親しい隣人やかかりつけ医などの現状を把握しておくことも大切です。心配なときに見に行ってもらったり、逆に心配なことを目にしたときに連絡をもらうといったサポートを受けられる可能性があります。