退職金は、一時金として「一括で受け取る」ほうがお得

では、いったいどちらの受け取り方のほうがお得なのでしょうか。

FPとしては、税金の控除が大きい「一括での受取」をおすすめします。年金や社会保険はこれからも制度が改悪され、負担が増えていくことが十分に考えられるからです。

ただ、退職後にもう働かないということであれば、年金型にして分割で受け取ってもそれほど税負担が増えることもないでしょう。

また、退職後も厚生年金に加入しながら働き続けるという場合も、これまでどおり会社が社会保険料の半額を負担してくれますので、税金の負担が増えることを過度に心配する必要はありません。

つまり、「退職後に起業する」「退職後に厚生年金には加入せずに働く」こういった場合には、一時金として受け取ったほうがお得になる可能性が高いです。

「一括受け取り」を決断したAさんだったが…

さて、退職金の受け取り方について調べていたAさんですが、定年退職後は、経験を活かして無理のない範囲でフリーランスとして働く予定です。したがって、「退職金は一時金として一括でもらったほうがよさそうだ」と考えました。

しかし、ここで疑問が湧いてきました。退職金を一括で受け取る場合、退職所得控除を受けるために会社から「退職所得の受給に関する申告書」を提出する必要があるらしいのですが、Aさんは退職にともなってあらゆる書類に記入し提出していたため、この書類を提出したかどうか記憶がありません。

あわてて会社に確認したところ、ひと安心。Aさんはきちんと提出していたようです。

書類は会社が準備してくれていたようで、すでに記入済みのものを受け取っているとのことでした。

Aさんはホッと胸をなでおろし、電話口の担当者に「ありがとう、助かった」と感謝しました。そして、退職金制度について自分できちんと理解することの大切さを改めて感じたのでした。

知らないと損…退職前後は「制度の最新情報」をチェック

退職金とひとくちに言っても、受け取り方には選択肢があり、本人の置かれた状況によって最適解もそれぞれです。年金や社会保険、雇用保険などの制度とも複雑に関係していますので、知らないと損をしてしまうこともあります。

退職後の人生を豊かに過ごすためにも、どのような選択肢があるか最新の制度を確認するようにしましょう。


石川 亜希子
AFP