老後2,000万円問題といわれて久しいですが、「老後資金の準備? 退職金ももらえるし、自分は大丈夫だろう」と楽観的に考えている人も少なくありません。ただ、ひとくちに退職金といっても、受け取り方次第で大きく手取り額が変わってくるため、注意が必要です。今回、具体的な事例をもとに、「損をしない退職金の受け取り方」についてみていきましょう。石川亜希子FPが解説します。
ありがとう。助かった…退職金額が「300万円以上」も変わる!?年収800万円の定年直前59歳サラリーマンが〈A4用紙1枚の申請書〉に感謝したワケ【FPが解説】
一括で受け取る場合は、〈A4用紙1枚の申請書〉の提出がマスト
この金額を見るとメリットしかないように思えますが、Aさんが心配していたように、大金が入ってきたことでついつい気が大きくなり、数年で使い切ってしまうようなタイプの人は要注意です。また、大金が銀行口座に入金されると、銀行から突然「投資信託をはじめませんか」と営業の連絡がくるでしょう。こうした営業が苦手な人にとってはデメリットかもしれません。
なお、この退職所得控除を受けるには、会社に「退職所得の受給に関する申告書」という書類を提出する必要があります。
この申告書は会社が用意してくれることが多い書類ではありますが、会社の義務ではありませんので、自分でもよく確認するようにしましょう。
もしこの書類を提出せずに退職金を受け取った場合、退職金額の20.42%の所得税が引かれてしまうことになり、退職金が1,700万円だと、約347万円もの所得税がかかることになります。
A4用紙1枚を提出するかしないかで、退職金の受取額が300万円以上も変わってくるのです。あとから確定申告をして取り戻すことは可能ですが、そもそも制度を知らなければ、控除を受けることができず大損してしまうかもしれません。
「分割」で受け取る場合は、長生きするほどお得
退職金を分割で受け取る場合
退職金を年金型として分割で受け取る場合は、一定の金額を長期間にわたり受け取ることができるため、使いすぎる心配がなく、ライフプランが立てやすい点がメリットといえます。また、受け取るまでのあいだは資金が運用されることになりますので、利息がつき、退職金の総額が増えるという考え方もあります。
さらに、企業年金が終身タイプであれば、長生きすればするほどお得になります。
ただし、一括で受け取る場合のような大きな所得控除はありません。また、雑収入として計上されてしまうため、この場合の退職金は公的年金収入やパート・アルバイト代など他の収入と合わせて税金が計算されることになります。つまり、税金や社会保険料の負担が大きくなる可能性があるということです。それにつれて、病気の治療や介護サービスの自己負担額が増える点がデメリットといえます。