「運のいい人」は、生まれつき決まっているわけではありません。生活していく上での考え方と行動パターンによって決まります。では、どのようにしたら「運のいい人」になれるのでしょうか?そこで本稿では、医学博士の中野信子氏による著書『新版 科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク出版)から一部抜粋して、いま、最注目の脳科学者がつきとめた運のいい人だけがやっている「思考」と「行動」を解説します。
自分を大切にすると他人からも大切に扱われる
ではなぜ、自分を大切に扱うことが運のよさにつながるのでしょうか。
その人の運のよしあしは、周囲の人といかに良好な人間関係を築けるかということに大きく左右されますが、自分を大切にしている人はほかの人からも大切にされるのです。逆に、自分を粗末に扱っている人は、他人からも粗末に扱われるようになってしまうのです。
たとえば、あなたの目の前に2台の車があるとしましょう。1台はピカピカに磨かれた車で、もう1台は汚れていて車体に叩(たた)かれた跡がある状態です。
もしあなたが「この2台の車のうち、どちらかを棒で思いきり叩いてください」と言われたら、あなたはどちらの車を叩くでしょうか。
おそらく多くの人が、汚れている車を選ぶと思います。
これは心理学の「割れ窓理論」(軽微な犯罪がやがて凶悪な犯罪を生み出すという理論)でもいわれていることですが、人にはある特定の秩序の乱れがあると、それに同調してしまうところがあります。
たとえばゴミひとつ落ちていないきれいな道にポイ捨てするのは気が引けますが、ゴミがたくさん落ちている道の脇なら「1個ぐらいなら捨ててもまあいいか」という気になる。すでに秩序が乱れている場所があると、さらに秩序を乱すことへの心理的抵抗が少なくなるのです。
実は、これと同じことが、人に対しても起こるのです。
自分を大切にしている人を粗末に扱うのは抵抗があります。しかし自分で自分を粗末に扱っている人には、こちらも同じように粗末に扱ってもいいような気がしてくる。身なりのきちんとした人には思わず敬語を使いたくなりますが、身なりにあまりに無頓着な人にはその気はなかなか起こりません。
つまり、ほかの人から大切に扱われるようにするには、そして、周囲の人と良好な人間関係を築くためには、まずは自分で自分を大切にする必要があるのです。
ナディーヌ・ロスチャイルドの言葉を借りれば、「自分で自分を好きになれるように、自分に心を配る」のです。
中野信子
東日本国際大学
特任教授/医学博士