いざ書くとなると、なかなかハードルが高い「遺言書」。しかし、「遺言書の作成は早めに取り組んだほうがいい」と、税理士の北井雄大氏は言います。北井氏の著書『相続はディナーのように “相続ソムリエ”がゼロからやさしく教えてくれる優雅な生前対策の始め方』(日刊現代)より、その理由を見ていきましょう。
「一度完成させた遺言書は書き直し不可」と思われがちだが…できるだけ早く〈1回目の遺言書〉を書いたほうがいい「納得のワケ」【税理士が助言】
遺言書は何度でも書き換え可能?
春樹:自筆証書遺言などの遺言書は何度でも書き換えられるとうかがって驚いたよ。
綾子:あらっ。そんなお話、あったかしら。
春樹:書き換えた後、どれが最新で有効な遺言書かわかるように、作成年月日を書いておくというお話があったぞ。
相続ソムリエ:春樹さん、よく覚えていてくださいましたね。「遺言書は一度書いたら永遠に変更できない」と思い込んでいる人が少なくないのですが、実際には何度書き直してもかまいません。
複数の遺言書があった場合には、日付が新しいほうが優先されます。極端なことを言えば、毎日、遺言書をアップデートしてもいいのです。そう気楽に考えれば、遺言書を書くハードルが下がるのではないでしょうか。
潤一郎:たしかに、気軽な気持ちで書けそうだ。
小百合:想像したくないけど、明日倒れる可能性もあるんだから、できるだけ早く1回目に挑戦したほうがいいわね。
相続ソムリエ:小百合さんのおっしゃる通りです。早い段階で、一度書いてみることをおすすめします。
中には、遺言書を遺書と勘違いしている人もいます。遺書は、自分の気持ちを伝えることを目的として、相続人に対する希望などを記すものです。一方で遺言書は、自分の保有している財産・債務をどう相続させるかの指示書にすぎません。遺書とはまったく目的が異なります。
潤一郎:なるほど。よく考えてみれば別物だが、混同してしまう気持ちもわかるな。
相続ソムリエ:「自分の気持ちがうまく整理できていないから遺言書が書けない」という人がいますが、それは思い違いです。自分の気持ちはいったん脇に置いて、財産・債務をどう相続させるかに意識を向ければ、決断は難しくないでしょう。
もちろん、付言事項として遺書的な内容を盛り込むこともできますが、遺言書自体は財産・債務に限定したものだと考えてみてください。
北井 雄大
税理士