相続してもらいたい大切な家族を思い、作成する「遺言書」。準備するにあたり、誰に相続させるかだけではなく、書き方や保管場所にいたるまで、さまざまなことを決めなければなりません。これまで数多くの相続問題に関わってきた税理士の北井雄大氏の著書『相続はディナーのように “相続ソムリエ”がゼロからやさしく教えてくれる優雅な生前対策の始め方』(日刊現代)より、詳しく見ていきましょう。
3.「秘密証書遺言」の作り方
桜:もう一つの「秘密証書遺言」も気になります! 遺言の存在を秘密にするっていうことですか?
相続ソムリエ:簡単にいえば、遺言書の存在を証明したうえで、内容を秘密にしておけるという遺言書です。あらかじめ作成しておいた遺言書に封をして、証人2人以上とともに公証役場に持参し、公証人にその存在を証明してもらいます。
綾子:なんだか公正証書遺言と似ているような……?
相続ソムリエ:公正証書遺言との違いは、証人・公証人ともに内容を確認しないため、誰にも内容を知られずに済むことです。
潤一郎:内容の確認が必要ないんですね。つまり、内容を秘密にできる代わりに、法的に無効になる可能性もある……ということですか。
相続ソムリエ:その通りです。公証人が文面をチェックできないため、間違いや漏れが発生し、法的に無効となってしまうリスクがあります。
小百合:保管は、公証役場でしてもらえるんですか。
相続ソムリエ:いえ。保管も遺言者自身が行うことになります。
春樹:自筆証書遺言と同じく、家庭裁判所の検認を経て有効になるということですね?
相続ソムリエ:その通りです。証人にも公証人にも遺言書の内容を知られずに済む一方で、無効になったり紛失してしまったりするリスクがある方法だと言えるでしょう。
北井 雄大
税理士