相続してもらいたい大切な家族を思い、作成する「遺言書」。準備するにあたり、誰に相続させるかだけではなく、書き方や保管場所にいたるまで、さまざまなことを決めなければなりません。これまで数多くの相続問題に関わってきた税理士の北井雄大氏の著書『相続はディナーのように “相続ソムリエ”がゼロからやさしく教えてくれる優雅な生前対策の始め方』(日刊現代)より、詳しく見ていきましょう。
2.「公正証書遺言」の作り方
桜:公正証書遺言は、専門家が作成・保管してくれる遺言書でしたね。
相続ソムリエ:桜さん、よく覚えていましたね! 公正証書遺言は、公証人という専門家が遺言者の意思を汲んで遺言書を作成し、保管もしてくれるものです。書き間違いや漏れがあって法的な効力が失われたり、紛失したりする危険性がないので、安心なんですよ。
春樹:公正証書遺言はどこで作れるんですか?
相続ソムリエ:遺言者本人と2人以上の証人が一緒に公証役場を訪れることで作れます。遺言者が自分の意思や計画を口頭で説明し、公証人がアドバイスなどをしながら遺言書の形にしていきます。書面が完成したら、遺言者と2人以上の証人が内容を確認し、署名捺印をして完了です。
小百合:公証役場というところに行かないといけないのね。お年寄りには大変じゃないかしら?
相続ソムリエ:万が一、病気やケガで入院している場合には、公証人が病院や高齢者施設、自宅などに出張してくれますよ。
潤一郎:とはいえ、早く取り掛かるに越したことはないな……。
綾子:保管もお願いできるならますます安心ですね。
相続ソムリエ:はい。遺言書の原本が公証役場で保管され、遺言者には正本(原本とまったく同じ内容のもの)が渡されます。万が一、正本をなくしてしまっても、公証役場に原本が保管されているため、再発行することができます。
綾子:公正証書遺言も、家庭裁判所でOKをもらわないと効力が発生しないんですか?
相続ソムリエ:いえ。既に法的効力を持つよう作成されているので、家庭裁判所の検認は不要です。
春樹:時間や手間がかからないのはメリットだね。コスト的にはどうかな? つまり、公正証書遺言の作成にどのくらいの費用がかかるのか……。
相続ソムリエ:公証人の手数料や証人の日当などを支払う必要があります。公証人の手数料は、相続財産が多額になるほど値段が高くなる仕組みです。相続財産が3,000万~5,000万円なら、公証人の手数料は3万円程度だと思っておくといいでしょう。
小百合:証人はどういう人に頼むものなんでしょう。
相続ソムリエ:ご家族でも、ご友人でも、未成年者や推定相続人以外でしたらどなたでもかまいませんよ。証人には遺言書の内容を知られてしまいますので、守秘義務がある税理士に頼むのも一つの手です。