人生100年時代と言われる現代、多くの人にとって「介護」は他人事では済まされない問題なのではないでしょうか。そして、「親孝行のつもりで介護をすると、親も自分もだんだんつらくなる」といった状況に陥ってしまうようなケースが数多く見受けられます。 本稿では、川内 潤氏の著書『わたしたちの親不孝介護 「親孝行の呪い」から自由になろう』(日経BP)より一部を抜粋し、Mさん家庭の実例をインタビュー形式で紹介しながら、母娘間における適度な距離に基づく「親不孝介護」について詳しく解説します。
「母の支配」を抜け出すためにも介護支援を活用
Mさん:「お母さん、私が今何歳だと思っているんですか」という話になったんですよ(笑)。まだそういうイメージを投影され続けているような感じがしまして。
さて、ようやく話が『親不孝介護』に戻るんですが、そういう中でもがいている母と娘の関係だと、「親と距離を取りましょう」というのは、娘にとって母親に関しては「言われなくてもそうしたいわ!」という感じじゃないかと。あくまで私の場合はですが。
編集Y:なるほど、表れ方の違いはあれ、距離感に悩むという意味ではあんまり変わらないのかもしれない。女性(娘と母親)だから、親子間の距離がしっかり取れるかというと、そんなわけでもないという。
Mさん:それはそうかもですね。うちの例が世の中全般に通じるわけでもありませんし、距離を取る、という考え自体が持てなくて悩んでいる女性の方もたくさんいると思います。そういう場合には『親不孝介護』は役に立ちますね。
川内:娘さんが、いざお母さんの介護が必要な状況になって、今まではそれぞれ独立してできていたことが、お母さんができなくなると、娘はイライラしながらも「でもしょうがないから」とやってあげちゃう。これで、保てていた距離ががんと崩れて、それで関係ががたがたし始める。そんな例はよく見ます。
Mさん:さっきも言いましたけれど、支配が強すぎてそのウラをかくというか、抜け道を考えることもできなくなりがちなので、それを介護支援制度の使い方という形で、「本人に話さずに、包括に相談してもOK」だと示してくださったのが本当にありがたいです。