強力な選手陣と監督によって、1985年にも優勝を果たしている阪神タイガース。掛布雅之氏の著書『常勝タイガースへの道 阪神の伝統と未来』(PHP研究所)より、元阪神タイガース岡田彰布氏・真弓明信氏ら2名への分析を通して、85年に阪神が優勝を成し遂げた要因をみていきましょう。
真弓明信 バッティングは泳いで打つ
阪神の打撃を語る上で、85年の不動の1番打者の真弓明信選手を語らないわけにはいかないだろう。
通算先頭打者本塁打歴代2位の記録を持ち、83年に首位打者を獲得。85年には1番打者として打率3割2分2厘、34本塁打というクリーンナップ並みの成績を残したことなどから、「史上最強の1番打者」と呼ばれている。
2009〜11年まで阪神監督を務め、2010年にはシアトル・マリナーズから城島健司、新外国人選手としてマット・マートンらを擁して、1リーグ時代を除けば球団最高のチーム打率となる2割8分9厘5毛、3割打者5人、90打点以上5人(うち100打点以上3人)、チーム安打は1,458本を記録して60年ぶりにセ・リーグ記録を更新した。
私が真弓さんとの思い出で鮮明に覚えているのは、85年のキャンプで「今年は勝てるだろう」と言っていたことだ。前年に池田親興、中西清起らが入団してチーム力が確実にレベルアップしていたことを実感していたのだろう。
真弓さんは、真っすぐを待っていてスライダーがきたら、それを泳ぎながら三遊間にヒットを打つということを意識していたという。我慢して最後にバットのヘッドを走らせるというイメージだ。そうするとボールにオーバースピンがかかって打球速度が増して、抜けやすくなるのだ。
真弓さんが言うには、外に逃げていくスライダーはひきつけて、一、二塁間を狙うようにと若いときはコーチに言われるが、そうするとなかなか内野手の間を抜けない。スライスがかかり、打球速度が遅くなるからだ。また、スライダーをひきつけて打とうとするとストレートが打てなくなる。ストレートのタイミングでスライダーがきて、泳ぎながらボールを見るとものすごくボールが見えてくる。当然、体勢は崩れる。あえて崩れることでボールが見えてくるらしい。