預貯金が900万円から513万円へと大きく目減り

1.不動産リスク

まず1つ目の不動産リスクですが、新型コロナウイルスの影響で観光客が激減。それにともなってリゾート地のコテージも解約が相次ぎました。当然、裕司さんのコテージも例外ではありませんでした。当初は年160万円を見込んでいた家賃収入はいまでは75万円に半減。裕司さんにとっては完全に誤算でしたが、見込み違いは不動産だけではありませんでした。

2.通貨リスク

次に2つ目の通貨リスクです。最初のうちは、為替相場が安定しており、発展途上国の通貨だからといって特に不安を感じることはなかったそう。万が一のときは日本円へ戻すことも可能でした。しかし、現地の景気と為替の相場は連動しており、コロナによる景気悪化に伴って為替相場も悪くなるばかり……預貯金も日本円で900万円から513万円へ大幅に目減りしていたのです。

3.異国リスク

そして最後に異国リスクです。裕司さんは移住直後、不動産屋から投資話を持ち掛けられました。それが「太陽光発電の事業」です。裕司さん自身も環境ビジネスは成長株なので手堅い投資先だと思い、言われるがまま、出資しました。現地の人と早く打ち解けたいという気持ちもあったようです。

しかし、移住5年目に国の方針は一転。今後は太陽光発電を国家事業として行うため、民間の施設を買い上げると言うのです。裕司さんはよくわからないまま売却したのですが、金額は180万円。わずか5分の1で買いたたかれてしまい、大損をすることに。

限界に達した妻「日本に帰りたい」

このように裕司さん夫婦は財産の目減りという真綿で首を絞められる状態でした。そんななか、先に根をあげたのは妻のほうでした。「健康に自信が持てなくなってきて……」と嘆くのです。妻はすでに72歳。いままでに大病をしたことはないにせよ、日々の生活で「衰え」を隠すことはできません。たとえば、少し歩いただけなのに胸が苦しくなったり、手足に痛みを覚えたりしており、また食も細くなり、なにを食べても美味しく感じなくなり、体重は1年間で4kgも減ってしまったそう。

こうして金銭的、そして肉体的に限界に達した妻は「日本に帰りたい!」と言い出したのです。具体的には日本にいる息子夫婦を頼るつもりで、すでに話を通しており、後は戻るだけの状態。しかし、それは現地の財産を手放すことを意味していました。