“最悪、生活保護でも受けます”…Aさんが見えていない「深刻な未来」

一方、Aさん自身は、この状況をどう思っているのでしょうか。

両親の隣に座っていたAさんは、あっけらかんと話します。

「まあ、贅沢はできませんが、別に車やブランド品が欲しいわけでもないし、いまのままでもとりあえず暮らしていけるので不満はありません。親に負担をかけているとは思いますが、いまさら正社員になれるとも思えませんし。将来のことはわかりませんが、親がいなくなったら最悪、生活保護でも受けようかと思っています」。

実際、そんな単純な話かというと、そうでもありません。

昨今、親が自立できない事情を抱える子どもの世話をし続け、親子ともに高齢化(親が80代、子どもが50代)した結果双方の生活が困窮し、社会から孤立してしまう「8050問題」が深刻な社会問題となっています。

しかもこれは個人だけの問題ではありません。1度レールから外れたら再び同じキャリアを築きにくい、皆と同じでなければいけないという同調圧力、問題が起こったら個人のせいになるという「自己責任」の考え方など、日本特有の“文化”に起因する面も少なくないのです。

また、引きこもりというと、昔は「若者の問題」だと捉えられていましたので、最近まで中年の引きこもり問題が世間から見落とされがちだったことも否めません。

A家も、現状は年金も貯蓄も十分にあり、“今日明日にも生活が困窮する”というわけではありません。これが問題を先送りさせてしまっているのかもしれませんが、筆者が試算すると、A家の深刻な未来が見えてきました。

このままでは10年で「家計破綻」に

Aさんの両親は、現在父が80歳、母が78歳と、もちろん年金生活です。夫婦で月23万円ほどの年金を受給していますが、長いあいだ大人3人分の生活費を負担しており、年間100万円ほど貯金を切り崩している状況です。

退職金も2,000万円ほどあったものの、現在は1,000万円程度に減っており、このままの生活を続ければあと10年で貯金が底をつきます。

また、両親のどちらかに万が一のことがあれば、受給する年金額は大幅に減ることになるのです。