いまの日本では、60歳で定年退職となったあとも働き続ける方が多数派です。ですが、いざ定年が近づいてくると、果たして自分は再雇用や転職が可能なのか、心配になる方も多いようです。ここでは、定年退職後を見据え、50代のうちにどのような準備を行えばよいのか見ていきます。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
50代サラリーマン「定年後も仕事にありつけるのか…」戦々恐々の日々。シニア世代の〈勝ち残り〉再就職プランニング【FPが解説】
60歳以降も収入を維持したい人は、50代からの準備が不可欠
生徒:定年後再雇用では給料が下がります。やる気の低下が問題視されているようです。
先生:この問題は、年功賃金を採用している企業において面倒になります。年功賃金を採っていると、定年時の給料は、仕事のパフォーマンスに比べて払い過ぎているわけです。その調整をしなければいけません。結果として、給料が3割下がるようなケースが生じます。
生徒:仕事内容に応じて給料を払う、いわゆるジョブ型雇用で採用されると、年齢は関係なくなりますから、高齢者でも高い給料をもらうことができませんか?
先生:そうですね。日本企業の年功序列賃金制度は、徐々にではありますが着実に修正されており、「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」へという流れは、長期のトレンドになっています。高齢者が働き方や処遇に悩むという問題も、これから解消されていくと思われます。
生徒:60歳以降も「比較的いいポジションがほしい」「いい給料を得たい」と思う人は、どうすればよいでしょうか?
先生:そのように考えるなら、50歳ぐらいから準備をしておく必要があります。定年退職後に再雇用されたとしても、多くの人が収入の大幅な減少に直面し、70歳で終了します。まず、自社内での「ジョブ型雇用」の有無を確認しましょう。この雇用形態があれば、50代のうちに管理職から一歩退いて、特定の専門分野に注力することが賢明です。これにより、特定のスキルや専門知識を深めることができ、再雇用時の価値が高まります。
「リスキリング」「営業活動」がキーワード
生徒:ジョブ型雇用がない場合は、どうすればいいよいでしょうか?
先生:その場合は、転職を検討しましょう。たとえヒラ社員になるとしても、専門性を高められる仕事に就くことが重要です。また、国家資格を取得して独立開業することも有効な選択肢です。自営業者になれば、年齢に関係なく働き続けることができます。70歳を過ぎたとしても、自分のペースで働くことが可能になります。
生徒:しかし、60歳になって独立開業するのは容易ではないような…。
先生:独立開業を成功させるには、定年前に将来の顧客を見つけておくことが不可欠です。たとえば、現職の取引先を顧客として見込むのはひとつの方法です。また、副業を通じて外部の人脈を築くことも、将来の独立開業にとって有効です。
生徒:「リスキリング」と「営業活動」が必要になるということですね?
先生:そうです。定年後も収入を維持するには、50代から積極的にキャリアの再設計を行うことが必要です。専門性を追求し、国家資格を取得することで、定年後の働き方の選択肢は大きく広がります。早めに準備をして備えれば、定年退職後の安定した収入確保・充実したセカンドキャリアの実現の可能性が高まるでしょう。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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