コーヒーが1番おいしくなる理想のポイント

これらの成分は、時間をカチッカチッと区切って別々に溶け出してくるわけではなく、すべての成分が少しずつ混ざり合った状態で出てきます。その混ざり合う比率が、時間の経過とともに少しずつ変化していくというわけです。

だから、抽出を初期の段階で止めてしまうと酸味っぽいコーヒーになるし、中盤あたりで止めると、甘さはあるけど、ちょっと酸味もあるあっさりしたコーヒーになる。そこで、さらにちょっと先まで引っ張ってあげると、すごく甘さもあるし、しっかりと質感のあるトロッとしたコーヒーになるわけです。

ただし、そのポイントを過ぎると、苦みのほかに雑味も増えてきてしまいます。雑味というものにはいろいろな意味があって、先述のえぐみや渋みのほかに「オフフレーバー」と呼ばれるものも出てきやすくなります。

オフフレーバーとは、コーヒー豆が本来持っているものですが、飲むときのコーヒーにはあまり出て欲しくない香りのこと。「出がらし」っぽい味わいと言えばわかりやすいかもしれません。

このオフフレーバーが抽出液の中に増えてくるにしたがって、例えば「オレンジ系のフレーバー」とか、「フローラルなフレーバー」といった、本来、その豆が持っている明確な個性が曇ってしまう。つまり、良質な部分が阻害されてしまうわけです。

では、そんなえぐみや渋み、オフフレーバーを、どこで断ち切るかということになりますが、コーヒーの抽出液は、いろいろな成分が混ざり合って出てくる以上、それらだけをゼロにすることはできません。

こうしたネガティブな成分をある程度許容しつつ、それら以外のおいしい成分を引き出していくとなると、図表2のグラフのタクタイルがピークに達するところ(「基本のレシピ」の2分20秒あたり)がその理想のポイントであると考えます。

このグラフに基づいて、時間経過ごとの味わいの推移を4段階で示したのが【図表3】のチャートです。

出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ)より抜粋
【図表3】時間経過ごとの味わいの推移 出所:『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ)より抜粋

このチャートの3と4の間くらいで抽出を止めてあげれば、タクタイルや甘さ、酸味があってフルーティーなおいしいコーヒーが出来上がるというわけです。

もちろんこの理想のポイントは、目に見えるものでもなければ、特定の秒数が必ず決まっているものでもありません。以降のページで解説するコーヒー豆の挽き目や粉量、湯量、湯温などのさまざまな要素によっても変化します。

ただ、コーヒーの味わいをコントロールするうえで、いちばんベースになる考え方になるので、まずはこれを理解しておいていただければと思います。

畠山 大輝

Bespoke Coffee Roastersオーナー

コーヒー焙煎士/コーヒー抽出士