人手不足問題を解消する有効な手段として期待される「アバター接客ツール」。近年ではコンビニや観光ガイド、アパレルショップなどの小売店や施設などで徐々に導入されはじめています。さらに、AI職員を活用した地方創生の新しい取り組みにも注目が集まっていました。ブロックチェーン技術を用いた次世代のネットワーク環境「Web3(ウェブスリー)」など新たなテクノロジーが浸透しつつあるいま、AI搭載アバターと地方創生にはどれほどの親和性があるのでしょうか?
人手不足解消、インバウンド対策まで…地方自治体で導入が進む「AI搭載アバター職員」の可能性 (※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

日本初となるAIアバター県職員「YAKAMIHIME」

(※写真はイメージです/PIXTA)
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鳥取県は2023年2月に、仮想空間に架空の組織として「メタバース課」を設立しました。「メタバース課」の主な目的は、メタバース空間内での情報発信を通じて「メタバース関係人口」を創出すること。同課では日本初となる自治体オリジナルAIアバター「YAKAMIHIME(八上姫)」が職員として採用され、話題となりました。

 

「YAKAMIHIME」は、「NOBORDER.z FZE」が開発したAIアバター生成アプリケーションである「XANA:GENESIS」を活用して作られました。

 

鳥取県が舞台となっている神話「因幡の白兎」のなかで、大国主命(オオクニヌシノミコト)とのラブストーリーを演じたとされる八上姫が名前の由来になっています。24時間いつでも大勢の相手と同時平行的に音声でコミュニケーションがとれることに加え、日本語だけでなく英語でも対応可能です。

 

AIアバターが地方自治体との新たな窓口となり得るか

(※写真はイメージです/PIXTA)
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令和5年12月時点での推計人口が53万7,318人となり、平成8年以降28年連続で人口が減少している鳥取県。少子高齢化も進む同県の自治体では、メタバース空間内で県の魅力をアピールすることがこうした社会的課題の解決に繋がると考えられています。

 

そもそも鳥取県庁内にメタバース課が設置されるきっかけとなったのは、2022年5月におこなわれたNFTトレーディングカードゲームと鳥取県とのコラボレーションです。

 

NFTトレーディングカードとは、デジタル空間でカードをトークン化し、データ改ざんや複製を防ぐカードデッキのこと。コレクション的要素も持ち合わせているトレーディングカードとNFTを組み合わせることで、資産価値を生むことにも成功しています。

※消費者が決済システムに対して直接カード情報(カード番号と有効期限)を送信して、まったく別の文字列に変換する技術

 

鳥取県がコラボしたのは、手塚治虫による人気キャラクター「鉄腕アトム」のトレーディングカード。

 

カード1枚1枚に鳥取県内の観光名所の写真とアトムのイラストが描かれ、市区町村ごとの魅力をアピールすることができる商品です。

 

こうしたメタバース空間を通じて県の強みを打ち出す取り組みを機に、地方自治体と県外に住む人々とが繋がるための新たな窓口として生まれたのが「YAKAMIHIME」です。