冬になってくると、人間の私たちも頭を悩ませる「冷え性」。実は、高齢のワンちゃんも「冷え性」になっていると、現役獣医師で『愛犬と20年いっしょに暮らせる本 いまから間に合うおうちケア』の著者である星野浩子氏はいいます。今回は、老犬を長生きさせるための「おうちケア」のコツにをみていきましょう。
エネルギーを「上げる・維持する・補う」の3本立て
マッサージとお灸、季節対策、食べ物をおうちケアの3本立てにするのは、東洋医学の考え方に照らし合わせれば、じつは非常に理にかなっています。
というのは、これまでお話ししたとおり、人間にしても、ワンちゃんにしても、すべての生きものはエネルギーを持って生まれてきます。
ところが、何もしなくてもそのエネルギーが持続するのは、人間であれば20歳くらい、ワンちゃんであれば7~8歳くらいまでで、あとは下がっていってしまうのです。
でも、マッサージやお灸をすれば、そのエネルギーを上げることができます。季節の影響を受けないようにすれば、そのエネルギーが下がるのを食い止めることができます。食べ物に気をつければ、下がっていくエネルギーを補うことができます。
おうちケアが3本立てというのは、こういう理由からです。
全部そろわなければいけないというのではなく、どれをやっても意味があります。1度にたくさんやろうとすると大変ですから、できることからはじめましょう。何からはじめなければいけないというルールもありませんから、気軽にやってみてください。
シニア犬の「冷え」に要注意
おうちケアをするにあたって、ぜひ覚えておいていただきたいのは、「冷え」をとることです。
高齢になってくると、エネルギーが下がってきます。エネルギーが下がると、体も内臓も動きにくくなります。そうなると、血のめぐりも悪くなります。それが冷えの原因です。
「冷え」は高齢のワンちゃんに共通する症状です。暑がりのワンちゃんでも、多くの場合、体の中は冷えています。女性の飼い主さんのなかには、同じような「冷え」の悩みをお持ちの方がいるのではないでしょうか。
「冷えは万病のもと」というとおり、血のめぐりが悪くなったことによる「冷え」は、さらにさまざまな体調不良を引き起こします。足や手の先が冷えるという症状は、ワンちゃんにも起こります。
ワンちゃんの足を触ってみてください。体はそれほどでなくても、足の先がひんやりしているかもしれません。それは足の先まで血がめぐっていないのです。
いわゆる「冷えのぼせ」もあります。人間の「冷えのぼせ」とは、下半身が冷えていても、顔はほてって汗が出るほどの状態を指しますね。ワンちゃんでも、足が冷えていても、頭は熱くなっていることがあります。それは気血が全身をバランスよくめぐらず、頭にのぼっているからです。
「血のめぐりが悪くなる→冷える→さらに血のめぐりが悪くなる→さまざまな不調を引き起こす」という悪循環におちいるのを防ぐためにも、おうちケアは大きな効果があります。冷えに弱い高齢のワンちゃんは、とにかくあたためてあげましょう。
「腹巻き」も効果的
足先の冷えは手のひらで包むようにしてあげます。全身の冷えを改善するには、ポイントは腰をあたためることです。上から見てウエストのくびれから下あたりです。
腹巻きも効果的です。冬はもちろん、夏もエアコンによる冷えから体を守るために、薄手の腹巻きをするのはとてもいいことです。
口当たりがよくて喜ぶようでも、冷たいものの食べさせすぎにも注意しましょう。
星野 浩子
ほしのどうぶつクリニック院長
獣医師/特級獣医中医師