AI作曲の普及によって起こる問題点
AIの機能は作曲以外に歌声の生成も可能となっています。2023年4月、TikTokerの@ghostwriterが、カナダ出身のラッパーであるドレイクとザ・ウィークエンドの声をAIで生成。
楽曲「Heart on My Sleeve」を配信したところ、世界で何百万回も再生される事態に陥りました。配信者はUMG(ユニバーサル・ミュージック・グループ)から著作権の侵害を訴えられますが、「これは始まりに過ぎない」と発言。
Spotifyではこの事態を受け、AIを使用した楽曲の大量削除をおこなうなど大問題に発展しました。現在、この楽曲はあらゆる音楽ストリーミングサービスから削除されており視聴することはできません。
ちなみに現状はAIのみで作曲した楽曲に著作権はありませんが、人間の手を加えた楽曲に関しては著作権が認められています。ただ「どのくらい手を加えたのか」という具体的な規定はないため、これからも難しい問題になり得るといえるでしょう。
いろいろとクリアすべき問題はあるにせよ、もしAIで生成した楽曲が「新しい音楽のジャンル」となれば話は別かもしれません。アレンジや編曲を加えて別物の楽曲に仕立て上げる「リミックス」はほぼ原曲のコピーですが、オリジナル曲として世間に認められています。
AI作曲によって「みんなで1つの曲を作る」ことが可能に
AI作曲は「みんなで1つの曲を作る」ことも可能にしました。
2026年に三重県桑名市で開校予定の「私立多度学園」では、AIで作曲した校歌を採用することが決定しています。理研革新知能統合研究センターと情報経営イノベーション専門職大学が共同開発した、「超校歌~AIがつくるみんなの校歌」というソフトを用いて作曲されたというこちらの校歌。
子供たちや保護者から校歌に入れたいキーワードを募って共同で作曲されました。もし自分の応募したキーワードが校歌に入っていたら、作詞家・作曲家の気持ちが味わえるかもしれません。
プロのクリエイターと高校生18人がタッグを組み、モーツァルトの新曲が作られたことも音楽の新しい可能性を感じさせます。「もしモーツァルトが生きていたらどんな新曲を作ったのか」というコンセプトのもと、Googleの開発したAI作曲ソフト「Magenta」を使用してアルバムが作成されました。
歌詞はモーツァルトが生前に書いた手紙と最新のヒット曲をAIに学ばせて生成したそうです。故人の新曲をAIを用いて作曲する――。ひと昔前なら考えられないことでした。