ここ数年のAI機能の発展は目覚ましいものがあります。AIで作成した小説や絵画がコンテストで賞を獲ることも珍しくなくなってきた昨今。音楽分野も例外ではなく、米グラミー賞においては「AIで作成した曲は審査対象外とする」と異例の声明まで発表されました。では、米グラミー賞も警戒するAI作曲の最新技術にはどのようなものがあるのでしょうか。また、音楽とAIは今後どのように共存していくのでしょうか、考察していきます。
いまは亡き名歌手の声をもう一度…「AI作曲」で変わりゆく新しい音楽の世界 (※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

ハミングするだけ!?誰でも簡単に作曲できる、音楽の自動生成ソフト

(※写真はイメージです/PIXTA)
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現在、誰でも無料で作曲ができるソフトは数多く開発されています。たとえば「Humtap(ハムタップ)」は、人がハミングした声に楽器やアレンジを加えて曲を生成してくれるソフト。楽器不要で作曲が容易にできるほか、スマホのカメラロールからビデオや写真をアップロードして、思い出に音楽を追加することも可能です。

 

「Mubert(ミューバート)」は単語や文章で楽曲のイメージだけを伝えると、それを基に曲を自動生成。単語・文章を入力しなくても、ジャンルや利用目的・楽曲時間を指定すれば曲を作ってくれます。「Mubert」は日本語対応になっていないため、テキストは英語で入力する必要がありますが、翻訳ソフトなどを使用すれば問題なく使えます。

 

大学でも開発されている、賢すぎる作曲ソフト

京都大学では歌詞を入力するだけで作曲してくれる「CREEVO(クリーボ)」を開発。「おまかせ作曲」と「デザイン作曲」の2つから選択して作曲ができます。「おまかせ作曲」は歌詞を入力すると自動で3タイプの曲を生成し、そのなかからお気に入りが選べる仕様。「デザイン作曲」は歌詞以外に楽器の種類やテンポ、コード進行などの詳細設定ができ、よりユーザーの希望に沿った楽曲が生成できます。

 

「CREEVO」はAIの学習方法としてよく知られる、ディープラーニング(数多くのデータを読み込ませる深層学習技術)を基本に開発されました。

 

東京大学では作曲家の模倣を目指した「Orpheus(オルフェウス)」というソフトが開発されています。「Orpheus」はディープラーニングではなく、音楽理論を確率モデルに組み込んだ設計。音大の学生が学ぶような音楽体系や、コード進行と旋律の関係を学習させるなどして開発されました。

 

「Orpheus」は自動作詞機能や二重奏機能もついており、楽譜の生成やダウンロードも可能となっています。

 

大阪大学では人間の脳波情報をベースに作曲するAIを開発。東京大学や京都大学のようにAIに勉強させるのではなく、一個人の脳情報から自動作曲をおこなうソフトです。脳波センサーはヘッドフォンと一体化した形状で、装着するだけで詳細な設定をせずとも勝手に作曲してくれます。感情モデルと合致した作曲ルールを形成するという独自の作曲方法で、将来的には「常に潜在能力を活性化させる独自の音楽」の作曲が期待されています。

 

「作曲」というと、素人にはなかなかハードルの高い特別なものでした。しかしこれらのソフトを使用することで、誰でも簡単に作曲ができる時代がやってきたのです。