ここ数年のAI機能の発展は目覚ましいものがあります。AIで作成した小説や絵画がコンテストで賞を獲ることも珍しくなくなってきた昨今。音楽分野も例外ではなく、米グラミー賞においては「AIで作成した曲は審査対象外とする」と異例の声明まで発表されました。では、米グラミー賞も警戒するAI作曲の最新技術にはどのようなものがあるのでしょうか。また、音楽とAIは今後どのように共存していくのでしょうか、考察していきます。
いまは亡き名歌手の声をもう一度…「AI作曲」で変わりゆく新しい音楽の世界 (※写真はイメージです/PIXTA)

AIは「ツール」として新しい音楽の世界を楽しむ

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

音楽業界でもAIを使った新しい試みがなされています。

 

2023年11月2日には、ビートルズの新曲「Now and Then」がAI技術によって現代に蘇りました。1980年にジョン・レノンが亡くなり、その後ダコタ・ハウスで録音されたデモテープがオノ・ヨーコからポールへ託されました。

 

しかし1990年代当時の技術では、ピアノ音にかき消されたジョンの音声を抽出することは不可能だったといいます。

 

AIの発達によってジョンの声だけを拾い再編集できるようになり、4人そろっての歌声が収められた新曲はファンを歓喜させました。

 

また、ルクセンブルクのスタートアップ企業が開発した「AIVA(エイヴァ)」も有名なAI作曲ソフトです。AIによって作曲した曲がルクセンブルクの国家創立記念日の祝賀会で披露されました。

 

「AIVA」の創業者ピエール・バロー氏が「AIはツールであり、それを活用するのが人間」と断言しているように、AIをうまく利用することで文字どおり「音楽」を楽しむことができればそれ以上のことはないでしょう。

 

いまは亡き、昭和の名歌手の歌声を「歌声合成技術」を使って蘇らせることも可能になりました。生前の話し声や歌声を収録した音源から、伴奏音除去技術を用いてより高品質な音をAIに学ばせることができるのです。

 

なかには、こうした歌声のAI生成を「故人への冒とくだ」と感じる人もいます。AIと音楽が共存するうえで倫理観も欠かせない問題となってくるのは必然です。特別な能力を必要とせずとも、誰もが作曲できるようになった時代だからこそ、守らなければいけないものをより一層強く意識することが重要なのではないでしょうか。

 

------------------------------------------------------------------------

吉田康介

フリーライター