世界に激震を与え、AIによる未来が一気に身近なものになった2023年。そのきっかけとなった「ChatGPT」の開発・運営などで知られる米OpenAIでは、CEOの解任劇で話題になりました。その一部始終を振り返ります。

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わずか5日間でひっくり返った解任劇

ChatGPTの開発・運営などで知られる米OpenAI(営利企業「OpenAI LP」と非営利企業「OpenAI Nonprofit」の総称)は、OpenAI LPのCEOのサム・アルトマン氏を電撃解任した後、1週間足らずで復帰させ、世間を騒がせました。

 

OpenAIは2023年11月17日、取締役会でアルトマン氏を解任する決定をしたと発表。しかし、そのわずか2日後の19日には、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏がX(旧・Twitter)に「サム・アルトマンとグレッグ・ブロックマン(OpenAIのPresident兼CTO)が同僚とともにマイクロソフトに入社し、新たな先進AI研究チームを率いる」と投稿しました。多くの一般社員に加え、経営中枢にいるブロックマン氏までもがアルトマン氏に連帯してOpenAIを去る決断をしたこと、さらに流出先はマイクロソフトであったことは大きな注目を浴びました。マイクロソフトはOpenAIを資金やインフラの面でサポートするパートナーであると同時に、市場や人材を取り合うライバルとしての側面もあるからです。

 

さらに2日後の21日に、OpenAIがアルトマン氏がCEOに再任すると発表し、ブロックマン氏や他の社員たちも復帰を決めたことで、騒動は一段落しました。

AI開発に「スピード」と「安全性」のどちらを優先するか?

この解任騒動は取締役会メンバー間で、AI開発におけるスタンスに違いがあったことによるものだと報道されています。

 

アルトマン氏は、AI開発において「スピード」を重視すべきという考えを持っているようです。迅速な開発と特に公共での展開(サービスの一般公開)が、技術改善に不可欠であると主張していました。

 

それに対し、より「安全性」を重視すべきだと考えるグループがありました。特に、解任を主導したとされるイリヤ・スッツケバー氏(創立メンバーの1人で主任研究員)は「我々は、潜在的に超知能を持つAIを制御し、暴走を防ぐための解決策を持っていない」と述べるなど、かねてより慎重論を唱えていました。この考えに同調した取締役会により、解任が決まりました。

 

ただし、スッツケバー氏はアルトマン氏を復帰させるべきだという社内署名に同意しており、解任が誤りであったことを認めています。人工知能の暴走への危惧が真剣に議論され、現実に職を失う事態にまで至ったことに、SF作品で描かれた未来はもはや現実なのだと実感せざるを得ません。

 

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本記事は、富裕層のためのウェブマガジン「賢者の投資術」(Powerd by OPEN HOUSE)にて公開されたコラムを、GGO編集部にて再編集したものです。
本記事は、掲載日時点の情報を基に作成しています。最新状況につきましては、スタッフまでお問い合わせください。