「おひさまエコキュート」は従来のエコキュートと何が違う?
上述の通り、エコキュートはもともと余剰の深夜電力を有効活用するために、深夜にお湯を沸かすことを前提とした給湯機器でした。それが、深夜電力の余剰が概ね無くなり、一方で太陽光発電の普及が進んだことから、昼間の太陽光発電による電力で一定程度お湯を沸かすエコキュートが各社から開発されています。メーカーにより、名称が異なりますが、「昼間シフト機能」や「ソーラーチャージ機能」などという名称で呼ばれています。
ただし、従来のエコキュートには、50%以上は夜間に沸かさなければならないという縛りがあり、この枠組みの中で開発されています。そのため、太陽光発電の電力で、昼間にもっと沸きあげることができる場合でも、制約されていました。この制約を乗り越えて、最大限に昼間に沸きあげることを可能にしたのが、「おひさまエコキュート」なのです。
従来の「昼間シフト機能」等のエコキュートとは、この点が大きく異なります。この違いについては、住宅業界の方々も認識していない方が多いようです。
なお、「おひさまエコキュート」は、エコキュートメーカー共通の名称で、現在のところ、ダイキン、パナソニック、コロナ、三菱電機、長府製作所の5社が商品化しています。
「おひさまエコキュート」のメリットとは?
「おひさまエコキュート」の最大のメリットは、昼間の太陽光発電で最大限沸きあげることが可能である点です。それにより太陽光発電の自家消費率を向上させることができます。ですが、それ以外にも効率を上げる2つの効果があります。ダイキン工業株式会社 空調営業本部 事業戦略室の藤田朋仁企画担当課長に詳しく話を聞きました。
藤田氏によると、効果の一つ目は、放熱ロスが削減されるということです。沸きあげたお湯は断熱されたタンクに貯湯されますが、沸き上げからお湯の利用まで時間が空くとどうしても放熱ロスが生じます。深夜に沸きあげるのではなく、昼間に沸きあげることで、夜の入浴等の時間までが短くなることで放熱ロスが少なくなり、エネルギー効率が向上します。
効果の二つ目は、気温の高い昼間に沸きあげることで、ヒートポンプの効率が向上するということです。すでに触れた通り、ヒートポンプは、暖房や給湯の時には、冷媒の温度が外気より下がった時に空気熱を取り込み、冷媒の温度が上昇した時に熱を放出します。そのため、暖房や給湯に使う際には、外気温が低いと、どうしても効率がさがります。
従来のエコキュートが外気温の低い深夜に沸きあげていたのに対して、「おひさまエコキュート」は外気温の高い昼間に沸きあげるため、効率が向上するのです。
この二つの効果により、従来のエコキュートに比べて、ダイキン工業の試算によると年間7~10%程度のエネルギー消費量が削減されるということです。
ダイキン工業の試算によると、東京電力の場合では、従来の夜蓄エコキュートに比べて、5kwの太陽光パネル前提では、10年間で131,720円(税込)もお得で、CO2排出量も約303㎏/年が削減されるということです。
前回触れた福岡県の有名工務店のエコワークスの小山社長によると、夜のオール電化の電気料金が最も安い九州電力においても、どのように試算しても、「おひさまエコキュート」の方が施主にとってメリットがあるということで、同社の場合は標準化しているということです。また、5kwよりもより大容量の太陽光パネルの方がメリットはさらに大きいそうです。
夜の電気料金がもっと高い東京電力等の管内であれば、経済的なメリットはさらに大きくなるということになります。
天気予報との連動も!
ダイキン工業製の「おひさまエコキュート」の場合、自家消費率を高めるために、天気予報と連動しており、例えば昼過ぎから雨の予報の場合には、天気予報と連動して自動で最適な沸き上げ時刻を判断する機能も付いているそうです
既存住宅でも導入の検討を
「おひさまエコキュート」は、新築・既存住宅とも経済産業省が導入にあたっての補助を行っています。今年度については、予算の消化率はあまり高くなかったようなので、ねらい目だと思います。
来年度は、おひさまエコキュートについては、経済産業省が最大13万円/台の補助制度を予定しています(参考:資源エネルギー庁『給湯省エネ2024事業(令和5年度補正「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」』)について』)。
特に、太陽光パネルを設置して、そろそろ10年を迎える住宅の場合には、卒FITにより、売電価格が大きく下がりますから、自家消費率の向上はとても重要だと思います。これから新築する方も、卒FITを控える方も、ぜひ「おひさまエコキュート」を検討することをお勧めします。