「膿疱性乾癬(GPP)かも…」と感じたら
群馬大学医学部附属病院は、群馬県内唯一の大学病院であり、皮膚科は“北関東広域圏の皮膚メディカルセンター”という自負のもと、県内外から多くの患者さんを受け入れています。「乾癬・角化症外来」の担当医として膿疱性乾癬(GPP)診療に携わる安田正人先生に、GPP診療に対する想いを伺いました。
Q.GPPの症状は、尋常性乾癬(最も一般的な乾癬)とどう違うのでしょうか。
GPPの患者さんには、もともと尋常性乾癬にかかっていて、その病態が変化してGPPを発症する方と、尋常性乾癬の罹患歴がなく急にGPPを発症する方の2つのタイプに分けられます。発症までの経緯は異なりますが、基本的なGPPの症状はいずれも同様です。
尋常性乾癬は、鱗屑という細かいかさぶた状のものがくっついた赤い発疹が身体の一部や複数の部位に現れるのが特徴です。
一方、GPPはストレスや外傷、なんらかの感染症などをきっかけとして、発熱や倦怠感、全身の皮膚の赤みとともに、膿疱とよばれる膿みを含んだ白いぶつぶつ(無菌性膿疱といいます)が体中に現れます。
多くの場合、症状は急激に現れ、またこのような急性症状(フレアとも呼ばれます)はいったん治まっても繰り返し現れるという特徴があります。
Q.患者さんが悩まれる具体的な症状にはどういったものがありますか。
GPPの急性症状は、ある程度早期に治療ができれば、比較的良好なコントロールが可能で急性症状の再発も減らせる可能性があります。ただ、もともと尋常性乾癬をもっていた患者さんでは、どうしても鱗屑などの尋常性乾癬の症状が残ってしまう場合もあります。
また、爪や指の発疹の影響で爪に凹凸ができるような症状が残ることがあります。爪の症状は治りにくく人目につきやすいので、気にされる患者さんも多いです。
さらに、GPPの急性症状の再発はなかなか予測できないこともあり、治療によりコントロールされている状態でも、再発に対する不安感を抱いてしまう患者さんもいらっしゃいます。
精神的なストレスはGPPの悪化につながってしまう可能性もあるので、そういった不安がある患者さんは、是非主治医や看護師などに早めにご相談いただければと思います。
Q.GPPのような症状が出てきてしまった場合、どの病院、診療科を受診すればいいのでしょうか。
もともと尋常性乾癬があって、皮膚科専門医がいるクリニックにかかっている場合は、そのかかりつけのクリニックにご相談いただくのがいいと思います。
しかし、尋常性乾癬がなく急にGPPを発症した場合や、かかりつけ医が皮膚科以外を専門としている場合は、症状からGPPを疑うのは難しいケースもありますので、無理をせず、大学病院などの大きな病院の皮膚科専門医を受診していただければと思います。
Q.初診時に患者さんから医師に伝えたほうがいいことはありますか。
GPPとよく似た症状が現れる別の病気で、薬剤が原因となるものがありますので、お薬手帳をお持ちの方はそれをもって受診するといいでしょう。
また、尋常性乾癬の罹患歴がある方は、発症年齢や治療内容、血縁者に尋常性乾癬にかかった人がいる、などの情報は診断の参考になります。
ほかにも、風邪をひいた、何らかの感染症にかかった、などの直近の体調、関節に痛みがあるかどうか、高血圧や糖尿病の治療中であるか、女性の場合は現在妊娠をしているか、といった情報も重要です。
Q.群馬大学医学部附属病院におけるGPPの診療体制を教えてください。
●専門外来を設け十数名のGPP患者さんの診療を行っている
GPPを含む乾癬患者さんに関しては、当院では「乾癬・角化症外来」という専門外来を設けて診療を行っています。
「乾癬・角化症外来」は週3回、私を含む3名の医師が担当しており、通院患者さんは約300人、そのうちの約4%にあたる十数名がGPP患者さんです。
GPPは関節症状を併発しやすい疾患ですが、関節症状がみられる患者さんで、それが乾癬性の関節炎なのか他の関節症なのか判断がつかない場合などは、整形外科と併診を行うなど院内で連携をとりながら診察を行っています。
●丁寧な説明で“症状をコントロールしていく疾患”であることをご理解いただく
当院は大学病院という性質上、GPP患者さんが高熱や発疹などの急性症状を呈した状態で紹介されてくることが多いため、患者さんにはまずは急性症状を抑える治療の説明を優先して行います。その後、症状が落ち着いた段階で、30分~1時間程度しっかり時間をとってGPPの症状や治療法を詳しく説明するようにしています。
説明にあたっては、急性症状が再発する疾患であり、その予測がなかなかできないため、症状に変化があった際にはすぐご連絡いただくように、ということは必ずお伝えするようにしています。
急性症状が再発しうるということを受容するのは、患者さんにとってなかなか難しい面もありますが、GPPが症状をコントロールしていく疾患であるということを丁寧にお伝えし、ご理解いただくように心がけています。
●県内の皮膚科医は顔が分かる間柄。患者さんを紹介してもらいやすい環境がある
尋常性乾癬の治療では、大学病院で生物学的製剤の治療導入を行い、かかりつけ医のもとで維持期の治療を行うといった病診連携が望まれています。
しかし、GPP診療においては、急性症状に対する全身管理の必要性や再発のリスクからそのような病診連携が難しい側面があり、むしろ、GPPが疑われる患者さんを迅速に大学病院や基幹病院に紹介してもらう必要があります。
その面で、群馬県内の皮膚科医は勤務医・開業医を問わず顔が分かる間柄であり、GPPを含む重症患者さんが紹介されやすい環境はあると思います。
Q.安田先生は群馬乾癬友の会(通称:からっ風の会)の相談医をされていますが、患者会のよさはどこにありますか。
群馬乾癬友の会の相談医として、年に2回ほど勉強会で講演をさせていただいております。患者会イベントの利点は、患者さん同士のつながりができたり、普段診察室だとなかなか時間もなくて聞けなかったことを医師に相談できることにあると思います。2021年はコロナ禍の影響でオンライン開催となりましたが、状況が改善し対面開催ができる日が来ることを待ち望んでいます。
Q.GPP患者さんにメッセージをお願いします。
指定難病であるGPPは、患者さんにとってつらく苦しい時期もある疾患です。しかし、GPPの原因もだんだんと明らかになってきており、現在はそれに対応する新しい治療法も出てきています。
しっかりとした治療により症状をコントロールしていくことで、ほとんど再発がないまま過ごせている患者さんも増えてきていますので、現在つらい思いを抱えていらっしゃる患者さんも、主治医とよくコミュニケーションをとりながら、治療を継続していってほしいと思います。
また、現在GPPが疑われるような症状がある方は、是非、一度皮膚科専門医にご相談いただければと思います。