家計の見直しで余裕を作る
無駄遣いをなくす
外食の回数を減らす、コンビニに通う回数を減らす、といったところから始め、金額の大きなものについては、「本当に必要か?」「ぜいたく品ではないか?」と考えてから購入を決めましょう。
不用品の売却
自宅のクローゼットや物置に眠っている「買ったけどほとんど使っていない」洋服やバッグ、電化用品など売れそうな物があったら思い切って売却してしまいましょう。家のなかもスッキリして気持ちもよくなります。
サブスクや固定費の見直し
毎月自動的に引き落とされてしまう動画配信などのサブスクもチェックしましょう。月額1,000円程度だから、といって、複数加入したりほとんど利用していなかったりといったものはありませんか? トレーニングジムなども仕事が忙しくなると利用できずに会費だけ払ってほったらかし、という方も多いようです。
保険の見直し
保険の見直しも効果がありますので、保障内容を確認し、ムダだと判断できる保険は減らすことも考えてください。ただし、新たに保険に加入する場合は「保険料が安いから」というだけで選んでしまうと、更新時期に保険料が上がってしまい、年齢が高くなったときに保険料が払えなくなるケースもありますので注意しましょう。
相続や贈与に関わる、そのほかの資金の作り方
資産運用したくても元手がなかったり家計に余裕がなかったりする場合があります。親に十分な資産がある場合は、頼ってみることも考えてみましょう。
空き家を持ち続けるとどうなるか?
Aさんの場合、母親が介護施設に入居したことで、母親が1人で住んでいた実家が空き家になってしまい、これをどうしようか悩んでいたところです。
空き家はそのままにしておくと、コストがかかり続け、厄介なものになっていきます。固定資産税・都市計画税といった税金の他に、火災保険等の維持費もかかり続けます。また、日本では空き家が急速に増えてきており年々空き家問題は深刻化する一方です。
最近では、京都市で「空き家税」が2026年度より導入される、とのニュースが話題になりました。将来は全国的に広がってもおかしくありません。
Aさんのケースの場合、現在空き家になっている実家は、Aさんの母親名義の物件です。そのため母親の同意がないと売却はできませんが、売却することでいくらかまとまった資金を手に入れることができれば、これを生前贈与することで将来のために運用して活かすことができます。なお、親が認知症になってしまうと、生前贈与も親が名義の不動産も売却が難しくなってきますので、元気なうちに対策を考えておいたほうが良いでしょう。
ほかにも親に余裕があり、可能であれば金融資産の一部を生前贈与してもらい、これを運用することができれば、毎月の積立額を減らすことができます。
なお、贈与の場合は年間110万円を超えての贈与は贈与税がかかります。贈与税の支払いができなかったり嫌だったりといった方は、「相続時精算課税制度」の届出も検討してみてください。ただし、制度の改正もありメリットもデメリットもある複雑な制度であることに注意しましょう。届出の前に専門家や税務署等で相談されることをおすすめします。
「相続時精算課税制度」とは
贈与税には、基礎控除(110万円)があり、この金額を超える場合は贈与税がかかります。この相続時精算課税制度は、合計2,500万円までの贈与には贈与税はかからない、という制度です。ただし、相続する際には、この相続時精算課税制度による贈与分を相続財産に加算して相続税を計算することになります。
つまりは、贈与分を相続税の対象にする「課税の繰り延べ」になる制度になります。ですから、「相続税を気にするほどではないが、基礎控除分を超えての贈与をしたい」といった方には非常に有利な制度です。
この制度は、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳※以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。
※令和4年3月31日以前の贈与については「20歳」となります。
いったん相続時精算課税制度を使う選択の届出をした場合は、同じ贈与者からの贈与財産については、二度と暦年課税制度を戻れないため、たとえ少額の贈与でも、贈与税の申告をしなくてはならない、というデメリットがありました。
ですが、2024年1月以降の贈与については、相続時精算課税制度に新たに「年110万円の基礎控除」の枠が加わることになりました。これにより、年110万円までなら相続税も贈与税もかからなくなります。
しかしながら、土地の贈与での相続時精算課税制度を利用に対しては、小規模宅地等の特例(土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度)を適用することはできませんので、ご注意ください。
おわりに
2022年からの物価上昇により、物価上昇率を上回る利率での運用を成功させなければ資産が目減りしてしまうため、資産運用は難しくなってきています。これまで以上に資産運用における「商品選び」は重要度が増しているのです。2024年からは新NISAもスタートしますが、自分に合った投資方法を見つけ、豊かな人生を手に入れてください。
川淵 ゆかり(川淵ゆかり事務所代表、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)
国立大学行政事務(国家公務員)後にシステムエンジニアとして、物流・会計・都市銀行などのシステム開発を担当。その後FPとして独立し、ライフプランやマネープランのセミナーのほか、日商簿記1級、CFP、情報処理技術者試験の合格経験を活かして、企業や大学での資格講座・短期大学や専門学校での非常勤講師としても勤める。