50代というと、会社員であれば一般的に最も所得が増える時期でしょう。 所得が増え、「これで老後も安心」と思っていても、“老後破産の危機”は潜んでいるもの。そこで、ファイナンシャルプランナーが実際に相談を受けた2人の“おひとりさま”の事例を通して、50代の資産形成の必要性とその手法を紹介します。
みんなが「資産形成」をはじめたきっかけ…給与は十分「なにも心配いらない」と過信していた50代“おひとりさま”の事例【FPが解説】 (※画像はイメージです/PIXTA)

“自由度の高さ”が裏目に…「50代・独身貴族」に待ち受けている老後破綻危機

 

総務省「家計調査(2023年)」によると、50代単身世帯の平均年収はおよそ410万円。支出は年間約276万円(月額約23万円)となっています。一方、平均的な金融資産は600万円台と少々心許ない状況です。

 

こうしたなか、配偶者や子がいない“おひとりさま”として定年を迎える場合、退職後の生活費をすべて自分ひとりで賄う必要があるため、老後資金の準備はより喫緊の課題といえます。

 

老後に不安を持つ2人の事例をもとに、50代独身の「リアルなお金の悩み」と解決策を見ていきましょう。

給料は“あるだけ使う”Aさんと “とりあえず貯める”Bさん

 

1人目の相談者Aさん(53歳・男性・IT企業勤務・年収950万円)は、いわゆる“独身貴族”。収入は高いものの高級志向で、趣味の旅行や外食、ガジェットへの投資に惜しみなくお金を使ってきました。そのため、1,000万円近い給与がありつつも貯蓄は200万円程度です。

 

手取り年収は約740万円前後ですが、月々どれだけ使っていいかの感覚が曖昧で、実際には収入以上のペースで使ってしまう月もあるとのこと。勤務先に退職金制度はあるものの、企業型DC(企業型確定拠出年金)の拠出額は月3,000円と最低水準で、さらに運用状況も確認せず“放置状態”でした。

 

そんなAさんがFPに相談することにしたきっかけは、会社の健康診断。血糖値が高く将来の病気リスクを意識したことで、お金の面でも老後への「備え」が必要ではないかと考えたそうです。

 

預金残高1,000万円も資産運用には消極的…実家暮らしの女性Bさん

一方のBさん(55歳・女性・教育関連企業勤務・年収720万円)は、実家暮らしの独身女性です。親の身体が悪くなってからは、介護もBさんが担うようになりました。

 

堅実な性格で、現預金は1,000万円近く保有していましたが、資産運用には消極的。「貯金があれば大丈夫」と考えていたものの、親の介護にかかる費用に愕然。自身の老後に対しても同様に不安を抱くようになったそうです。

 

親を介護施設に入れることを検討していることから、将来的に実家を売却できるかも含めて相談したいと、筆者のもとを訪れました。