ダウン症とは、染色体の異常から発症するダウン症候群という先天性の疾患です。ダウン症の多くは知的障害との合併を伴い、さまざまな身体的異常が見られるのが特徴です。一般的にダウン症は運動機能や知能、言葉などに発達の遅れが見られます。また、さまざまな合併症を発症するため継続した治療が必要となる場合があります。今回は、ダウン症の身体的特徴や合併症の発症の原因、また、合併症の種類などについて解説します。

知的障害であるダウン症患者がかかりやすい「合併症」

染色体の異常で発症するダウン症は身体にさまざまな影響を及ぼします。心臓疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、甲状腺機能低下、難聴など多くの合併症が伴います。

 

合併症の種類もさまざまですが症状もそれぞれ違います。重症度が高くなることもあれば、軽度の状態のこともあり治療方法が異なります。また、ダウン症の多くは複数の合併症を伴います。

 

合併症は出生直後など早期から治療することで、重症化のリスクが軽減されることがあります。また、新生時期には発見できなかった疾患が成長の段階で発症することがあります。

 

ダウン症は知的障害を伴うことが多いので、身体の異常を自ら伝えられないことがあります。そのため疾患の発見が遅れることがあり注意が必要です。

 

ダウン症がかかりやすい合併症を項目ごとに解説

・心疾患

ダウン症の新生児の約半数がなんらかの心臓に疾患を持っています。特に多いのが、心臓の右側と左側を隔てる壁に穴が空いている状態です。心室中隔欠損、心房中隔欠損といわれる疾患です。治療を必要としない軽度の場合から、手術を必要とする重症な場合があります。

 

・消化器系疾患

生まれつき十二指腸が閉じている「十二指腸閉鎖症」や肛門が閉じている「鎖肛」などの症状がダウン症の新生児に多く見られます。消化や排泄ができないため早期に手術を行います。

 

・代謝・内分泌系疾患

ダウン症の場合、先天的に甲状腺機能が低下していることが多く見られます。新生児の段階で発見され治療が開始される場合がありますが、乳児期に発見されずに成長段階で症状が出ることもあります。肥満、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症など成長の過程で治療が必要になることもあります。

 

・耳鼻科系疾患

ダウン症の難聴の場合、多くは伝音性難聴だといわれています。滲出性中耳炎などが原因で発症します。その場合は成人になると改善することがあります。

 

・眼科系疾患

ダウン症の約60パーセントに斜視や白内障、遠視、近視、乱視などの症状が発症するといわれています。メガネによる矯正が必要になる場合があります。

 

・血液系疾患

急性白血病を発症する頻度が通常より10倍から20倍ほど高いといわれています。また、鉄欠乏性貧血が見られることもあり、内服薬等の治療が必要になることがあります。

 

・泌尿器系疾患

ダウン症の男児で多いのが停留精巣です。陰嚢の中に精巣が入っていない状態をいいます。自然下降が見られない場合は、1歳から2歳頃までに手術することが多いようです。

 

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ダウン症は知的障害や合併症により発達に遅れが見られる疾患です。成長の過程は全般的にゆっくりです。また、さまざまな合併症は身体に影響をあたえ、生活に制限が出ることがあります。しかし、医学が発達してきた現在では合併症の早期治療が可能になってきています。

 

ダウン症は多くの合併症を伴う疾患であることを理解することが大事です。合併症は種類や症状に応じた治療が必要になります。主治医と相談して、疾患ごとの専門医と連携することが重要になります。また、子供の頃にはなかった疾患が、成長段階において発症する場合があることも抑えておきたいポイントです。

 

ダウン症の正しい知識を持って、継続した医療的ケアや日常のサポートをしていくことが大切だといえるでしょう。