「アリペイ」、「ウィーチャット」から分析するスーパーアプリの内実
アリペイにせよ、ウィーチャットにせよ、決済・送金機能だけではなく、さまざまな機能への導線がついています([図表]参照)。
アリペイ、ウィーチャットの機能導線は、それぞれ以下のようなものです。
【アリペイの機能導線】
《都市交通》
ディディ(配車アプリ)、ハローバイク(シェアサイクル)
《旅行お出かけ》
航空機鉄道チケット予約、ホテル予約、現地体験、鉄道公式サイト、翻訳、税関
《日常生活》
携帯電話料金支払い、怪獣充電宝(シェアバッテリー)、小電充電宝(シェアバッテリー)、宅配便追跡、ツァイニャオ(宅配便サービス)、映画チケット予約、公共料金支払い
《資金サービス》
為替レート検索、送金、クレジットカードの繰り上げ返済、紅包(ご祝儀)送金、外国人向けアリペイチャージ
《公益活動》
脱炭素関連の公益サービス、杭州アジア大会情報
【ウィーチャットの機能導線】
《フィンテック》
クレジットカードの繰り上げ返済、投資、保険サービス
《生活サービス》
携帯電話料金支払い、公共料金支払い、Qコイン(テンセントのゲーム課金)、都市サービス、公益事業、ヘルスケア
《交通》
移動サービス各種、鉄道チケット、ディディ(配車アプリ)、ホテル予約
《ショッピング》
ブランド発見、JDドットコム(EC)、フードデリバリー、映画チケット予約、格安商品購入、ピンドゥオドゥオ(格安EC)、唯品会(EC)、中古品購入、不動産
アリペイもウィーチャットも、びっくりするほど多くの機能への導線を備えています。日本に引きつけて考えてみると、公共料金の支払いや映画チケットの予約など、コンビニで利用できるサービスの多くが集約されているということです。アリペイやウィーチャットはいわば「手のひらの上のコンビニ」なのです。
他社サービスまですべて「アプリ内」で完結してしまう
どれだけ巨大な企業であっても、これほど多くのサービスを自社だけで提供することはできません。他社のサービスも多数含まれています。さらにディディやJDドットコムなど企業名が表示されているサービスまであります。重要なのはこれらのサービスを使う時、アリペイやウィーチャット以外のアプリやサイトに移動することなく、もともと使っていたアプリ内で操作が完了するという点です。
しかも、まだまだ多くの機能を使うことができます。アリペイやウィーチャットには「ミニプログラム」と呼ばれる追加機能があります。通常のスマートフォンアプリよりも手軽にダウンロードでき、しかもアリペイやウィーチャットの中で動作します。カジュアルゲームやネットショップからお店の会員アプリなどさまざま。
その数はアリペイで400万種類以上、ウィーチャットで700万種類以上と、膨大な数があります。米アップルの発表によると、iPhoneやiPadのストアで配信されているアプリは2022年時点で178万件だったそうです。それよりもはるかに多いミニプログラムが存在するのです。
アリペイやウィーチャットから別のアプリやブラウザに移行することなく、いろんな機能やサービスを活用することができる。これがスーパーアプリと呼ばれる理由なのです。実際に使ってみるとわかりますが、スーパーアプリはとても便利です。いちいち新しいアプリをインストールするのはとても面倒ですよね。