糖尿病患者の日々の負担を軽減
糖尿病についても、ウェアラブルデバイスの活用が期待されます。糖尿病は年々増えてきており、失明に至る糖尿病性網膜症や、人工透析が必要となる糖尿病性腎症などの重篤な合併症の原因となるため治療は必須です。
糖尿病の診療においても血糖値を測定することはとても重要ですが、以前は指先に針を刺し、血糖測定器を用いて測ることしかできませんでした。特にインスリン治療を受けている患者さんの場合、血糖値を測定することがとても重要で、自己血糖測定(SMBG)と言って、ご自身で指先に針を刺し、1日に複数回血糖値を測定することが必要となります。ですが、この自己血糖測定では針を刺す痛みを伴いますし、患者さんにとっては負担が大きく、1日のうち血糖値を測定する回数にも限りがあります。
この問題を解消してくれるのが持続グルコースモニタリング(CGM)です。CGMは、皮下に刺した細いセンサーにより皮下の間質液中の糖濃度(間質グルコース値)を連続的に測定する医療機器のことです。これにより、1日の血糖値変動を正確に把握できます。2017年頃よりCGMを行うためのウェアラブルデバイスが使用可能となり、近年では一般的な検査となってきました。
現在は、腕に細い電極の付いたパッチを装着し、2週間連続して血糖値(正確には皮下のグルコース濃度)を自分で測定することが可能です。従来の血糖測定と異なり、その都度針で刺す必要もありませんし、パッチを装着するのも簡便かつ痛みもほとんど感じません。パッチを装着したまま運動や入浴も可能です。スマートフォンやスマートウォッチに、自動で血糖値が記録されるため、従来では不可能であった就寝中の血糖値の測定も可能となりました。これは糖尿病治療において重要な副作用である「低血糖」の検出において非常に有用です。
持病のない人の「健康寿命の延伸」にも期待
現在は医療機関で得られた情報を中心に診療が行われることが一般的であり、その情報は患者さんの日常生活におけるごく一部のものでしかなく、更には該当の医療機関でしかその情報は知ることができないという大きな問題点がありました。
現在の医療現場においてウェアラブルデバイスはまだまだ活用しきれているとは言えませんが、これらをうまく活用することで、診療の質の向上につながることは間違いなく、多くの医療従事者がそのことを認識しています。また、持病の無い方々でもウェアラブルデバイスを活用し、健康に関心を持つことにより、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の予防や、健康寿命の延伸につながることも期待できます。これからのウェアラブルデバイスの更なる進歩に目が離せません。
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岡田 有史
総合内科専門医 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
弘前大学医学部および同大学院卒。2012年より父より岡田医院(京都府木津川市)を継承し、地域医療のために従事。大学から始めたテニスが徐々に趣味の領域を超え、2018年よりプロテニス選手のスポンサーを開始。2020年に日本スポーツ協会公認スポーツドクターを取得し、資格を活かすため株式会社next geneを設立。現在は地域のために診療を行いつつ、アスリートのパフォーマンス向上のために活動している。