AIが人類の仕事を奪うといわれて久しいですが、近年は、AIの普及によって新たに生まれた職業である、“AIの開発や運用を行う人材”の不足が叫ばれています。また、AIを使ったアニメや漫画など、人類とAIが互いの得意分野をかけ合わせて作品を制作するケースが続々と生まれています。一方で、AIは創造だけでなく予防も得意です。近年は人間の弱点を補完し、トラブルを未然に防ぐAIやITが進化を遂げています。本記事では、リスクヘッジに役立つテクノロジーをご紹介します。
SNSの炎上リスクを予測するAIに、偽ブランド品を判別するブロックチェーン。リスクヘッジに役立つテクノロジー (※写真はイメージです/PIXTA)

 ※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

SNS投稿の炎上リスクを予測する『炎上チェッカー』

昨今、ネットにおける最も影響力のある脅威の1つが“炎上リスク”です。SNSの炎上は、企業の損失やブランドイメージの失墜を招き、個人の日常や尊厳までも脅かします。刑事事件に発展することもあり、深刻な社会問題となっています。

 

そうした状況のなか、クリエイティブ・テックエージェンシーTAMは「炎上チェッカー」を2023年11月にローンチしました。ChatGPTのAPI機能を活用し、SNS発信におけるリスクを予測・評価します。これまで人間が1つ1つ行っていた、投稿の作成やチェックをAIが担うことで、人為的ミスを無くし、未然に炎上を防ぐことができます。

 

炎上チェッカー(株式会社TAM提供)
炎上チェッカー(株式会社TAM提供)

 

SNSに投稿予定の内容を入力すると、AIはさまざまな角度から“炎上リスク”を5段階で評価。さらに、投稿内容の改善案を提示します。

 

このようなリスクを検討するには、時事情報や日々変動する、世の中の人々の関心事の認識と分析が不可欠です。Googleのトレンド情報を取得し、常に最新情報をアップデートし続けることで、確度の高いリスクヘッジを可能にしています。

 

SNSや広告等の運用代行サービスを提供するTAMが、SNS運用の業務負担の重さ・属人化等の課題を解決するために開発しました。利用者からは「事前にリスクを抑えられるのはもちろん、どのくらいの炎上リスクがあるのか、どこを改善すべきかが明確で分かりやすい」という声が届いています。

 

同社は、今後は「画像認識機能」を追加し、より幅広いリスクに対応できるようサービスを進化させていく考えを示しています。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)
 

法務業務全体を包括的に支援、AI法務プラットフォーム『LegalOn Cloud』

次に紹介するのは、企業や組織の法務をサポートするテクノロジーです。法務関連ソフトウェア開発等を手がけるLegalOn Technologiesは、AI法務プラットフォーム『LegalOn Cloud』をローンチしました。法務にまつわる相談案件の管理や契約書のレビュー、締結後の契約管理、法令リサーチ、法改正対応など……あらゆる業務を扱います。

 

特に、契約書レビュー機能は、リスクヘッジに役立ちます。弁護士監修のAIが文書に潜むリスクを洗い出し、チェック項目と修正案を提示。さらに、特定の条件下で適用される法律や省令・規則、条例等も併せてチェックします。

 

『LegalOn Cloud』の操作画面(株式会社LegalOn Technologies提供)
『LegalOn Cloud』の操作画面(株式会社LegalOn Technologies提供)

 

開発のきっかけは、同社の創業者である角田望氏。ある日、Google子会社が開発した囲碁ソフト『アルファ碁』がプロ棋士を倒す姿を目にします。角田氏は「契約書関連業務を行う人々が背負う“リスクの見落としに対する不安”や精査の時間、後戻りできないプレッシャーを、AIで解消できないか?」と考えました。

 

同サービスは、ローンチ前から大企業をはじめ中小・スタートアップ企業、法律事務所など200社以上から申し込みがあり、大きな反響を呼びました。ローンチ後は、利用企業から次のような声が寄せられています。

 

「契約書のレビュー結果と同時に、なぜそれがリスクなのかが分かる弁護士監修の解説記事が提示されるので、新人の教育に手が回らずともOJTで学習を進められる」

「情報の分散を防ぐことができる」

「修正ややり取りの過程を探す手間が無くなった」

 

今後は、さらに幅広い法務全般をカバーできるよう、サービスを展開していく見通しです。