家電であふれる現代の住宅は、リモコンだらけ、配線だらけになりがちです。しかし、「スマートホームサービス」を導入すれば、手元のスマートフォンやスマートスピーカーで一括操作できるようになります。現在、スマートホーム事業には多くの企業が参入しており、2030年度には1120万戸に増加すると予測されています。住宅のスマート化がもたらす生活の変化や対策が急務とされるセキュリティ課題について解説します。
家中の家電を1つにつなぐ「スマートホーム」、市場規模は2030年に“2倍” (※写真はイメージです/PIXTA)

「2030年度に1120万戸まで増加」と予測されるスマートホーム

スマートホーム事業には、三菱地所のほか、大和ハウス工業やケーブルテレビ事業を手掛けるイッツ・コミュニケーションズ(イッツコム、東京・世田谷)など多くの日本企業が参入しています。

 

調査会社のシード・プランニング(東京・文京)は、2019年度に360万戸だったスマートホームは、2027年度に880万戸、2030年度には1120万戸に増加すると予測しています。累計の市場規模も2019年度の4320億円から2027年度には1兆560億円、2030年度には1兆3440億円に膨らむ見込みです。

 

株式会社シード・プランニングの情報をもとに筆者作成
 

同社によると、スマートホームの導入コストやランニングコストは10年前に比べて3分の1程度まで減少したといいます。技術の進歩により、スマートホームに使う電池や部品などの単価が下がったためです。これにより、ランニングコストは月1000円程度にとどまるとされています。

 

杉本昭彦主任研究員は「少子化で人口が減少する中、付加価値の低い住宅は売れ残り、付加価値の高い住宅の需要が増える。不動産業者が開発するマンションにスマートホームを導入する事例は今後も増えていく」と指摘。また「スマートホームといっても、必ずしもフル装備ではなく、顧客の必要なものだけを選択できる方式のものが普及するだろう」と分析しています。

セキュリティ強化や個人情報保護などの課題

スマートホームにはセキュリティ強化に関する課題も存在します。2016年には、あらゆるモノがネットにつながる「IoT機器」をターゲットとした「Mirai(ミライ)」と呼ばれるウイルスが世界中で拡散。このウイルスは、パソコンやサーバーだけでなく、ウェブカメラやスマート家電などのIoT機器を、別の標的へのサイバー攻撃に悪用する「踏み台」として利用したのです。

 

パソコンやスマートフォンなどの端末に比べ、ウェブカメラやDVDレコーダー、家電などのIoT機器はセキュリティ対策が甘いとされ、より厳しい対策が急務となっています。