人間の感情を人工的に作り出すことは難しく、これまで「感情を持つAI」は実現されていません。しかし、シンギュラリティ(2045年問題)のように、AI技術の発展により、何か想像ができない未来が起きうる可能性があるとされています。AIが感情を持つことは可能なのでしょうか。現在の技術や研究の状況を踏まえて解説します。
人間よりもAIの方が感情の動きに敏感?「感情認識AI」の可能性 (※写真はイメージです/PIXTA)

AIが感情を持った未来とシンギュラリティ

AIがより進化し、さまざまな業界でIT技術が普及することは人類の未来において喜ばしいことです。たとえば、後継者問題を抱える第一次産業などでは、AIによる生産管理や業務の自動化によって問題解決の筋道が開けるかもしれません。

 

一方、AI研究者の間ではシンギュラリティ(2045年問題)と呼ばれる問題が提起されています。シンギュラリティは「技術的特異点」とも呼ばれ、2045年頃にAI技術の発展により、何か想像ができない未来が起きうる可能性があるとされています。その結果、これまでの世界とはまったく異なる、従来の予測や想像が困難な未知の世界が訪れると予測されています。

 

2000年問題という類似の問題があったことは記憶に新しいかもしれません。西暦の表記によるコンピュータシステムの誤作動が懸念されていましたが、実際には大規模な混乱や障害はほとんど発生しませんでした。しかし、2045年問題は、SF映画のような現実では考えられない変化が起こる可能性を持っていると言われています。

 

インテル社の創業者であるゴードン・ムーア氏は1965年、大規模集積回路(LSI IC)の製造・生産における長期傾向について書いた自身の論文の中で、ひとつの指標を論じました。それは「他の重要な発明と結びついたひとつの重要な発明は、次の重要な発明が登場するまでのスパンを短くする。そして、イノベーションの速度を加速することで、科学技術は直線的ではなく指数関数的に進歩する」というものでした。

 

人類の歴史を考えてみると、進化のスパンが短くなっていることが分かります。最初の霊長類は1億年前に現れ、後ろ足立ちのできるグルームが現れたのは4000万年前です。人の祖先が現れるまでのスパンも徐々に短くなり、猿人は400万年前、原人は200万年前に現れました。旧人類は50〜30万年前に登場し、進化のスピードが加速しています。

 

こうした人類の進化の過程における観点からも、AI研究家たちは、このまま新しいイベントの発生が加速し続ければ、2045年に技術的な特異点に到達すると予測しているのです。