不動産投資で賃貸経営を始めるにあたり、入居者とどのような契約内容を交わすべきかと気になっている方もいるのではないでしょうか。本記事では、賃貸借契約書に記載するべき4つの特約や、特約を設ける際の注意点を解説しています。入居者とのトラブルを避け、健全な賃貸経営をしたい方はぜひ参考にしてください。
不動産オーナー必読!賃貸借契約の「特約」とは? (※写真はイメージです/PIXTA)

 

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賃貸借契約の特約とは

不動産の賃貸借契約書には、物件の所在地や契約期間、家賃などの基本事項が明記されます。そのほか、契約内容に付随して個別に設定する条件を「特約」と呼びます。

 

特約は法律で定められるものではなく、原則として当事者間で自由に設定することが可能です。入居者とのトラブルを避けるため、一般的にはオーナー側が希望する条件を契約書に盛り込むことが多いでしょう。

 

ただし、法律に反する特約や一般的な常識の範囲を超える特約は認められません。

賃貸借契約書に記載するべき4つの特約

賃貸借契約の特約はオーナーの意向によって設定が可能ですが、ここでは特に記載するべき4つの特約を紹介します。

 

  • 修繕費用や原状回復に関する特約
  • 転貸禁止の特約
  • 利用制限に関する特約
  • 短期の解約に関する特約

 

ひとつずつ見ていきましょう。

 

■修繕費用や原状回復に関する特約

「原状回復」とは、賃貸契約終了時に借主が退去する際、物件を入居時と同じ状態に戻すことを指します。原状回復には高額な修繕費用がかかることもあるため、入居者とのトラブルを避けるためにも、特約を設けておくことが望ましいです。

 

国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、経年劣化による破損はオーナー負担で修繕すべきです。

 

一方、入居者の故意や過失による破損については、入居者負担で修理します。このような場合は、入居者負担で修繕することを特約で定めておくとよいでしょう。

 

■転貸禁止の特約

転貸禁止の特約とは、借主が貸主に無断で他者に物件を転貸(又貸し)することを禁止する特約です。

 

無断転貸は民法612条でも禁止されており、賃貸契約は互いの信用があって成立するものであるため、第三者への貸し出しが禁止されているのは当然のことといえます。

 

ただし転貸が行われた場合でも、契約を即時に解除できるわけではありません。また、あくまでも民法上の制約であるため、契約書面にも特約として明記しておくことが望ましいでしょう。

 

■利用制限に関する特約

賃貸物件の健全な経営には、借主に対する利用制限の特約を設けることが有効です。たとえば、喫煙を禁止する特約やペットの飼育を禁止する特約が該当し、利用制限の範囲や期間のほか、違反した場合の罰則などを明記します。

 

禁煙に関する特約では、室内全面における禁煙や、ベランダでの禁煙を指定することも可能です。ただし違反した場合に、汚れの程度にかかわらず借主がクロスの全面張り替え費用を負担するような特約は、無効となる可能性があります。

 

また、ペットの飼育には床や壁の傷、匂い、騒音や住民への攻撃などのトラブルが発生することがあります。ペット不可としたい場合は、飼育だけでなく一時預かりも禁止する旨を特約として明記しておきましょう。

 

■短期の解約に関する特約

短期の解約に関する特約とは、一定期間内に借主の都合により解約する場合に違約金を設定するものです。どの程度の期間を短期とするかという明確な指標はありませんが、6ヵ月未満、1年未満、2年未満などの期間に応じて、違約金を設定することが一般的です。

 

短期解約の違約金の金額については、法的に定められているものはありません。賃料1ヵ月分程度の違約金であれば問題ないとされる場合が多いですが、あまりにも高額な違約金は無効とされる場合もあります。

賃貸借契約の特約に関する注意点

前項では付帯すべき特約についてお伝えしましたが、実際に特約を設ける際には以下3つの注意点があります。

 

  • 法律に反しない特約内容とする
  • 付帯する必要のある特約を設ける
  • 曖昧な表現を避ける

 

特約は基本的に当事者間で自由に定められますが、法律違反や一般的な常識・道徳に反する内容の特約は認められません。特約の有効性を主張するには、その特約を設ける理由が合理的であることが必要です。

 

たとえば、貸主側の都合で即時解約できる特約や、普通賃貸借契約における契約を更新しない旨の特約は、借地借家法に反するため無効になります。

 

また特約の内容について曖昧な表現を用いると、誤解が生じてトラブルの原因になる可能性があります。そのため、契約書面には明確に記載することが重要です。

まとめ

賃貸借契約の特約は、オーナーの意向で設けることが可能です。特に記載するべき特約としては、原状回復や短期解約に関する特約のほか、転貸禁止や利用制限の特約などが挙げられます。

 

特約を設定する際は、法律や一般常識から外れていないことを確認した上で、契約書に明記しましょう。初めての賃貸経営で不安がある場合は、契約から運用までを事業者に任せることも選択肢のひとつです。

 

一口1万円から始められる不動産クラウドファンディングでは、運営事業者が入居者と契約を交わすため、投資家が入居者のトラブル対応をすることはありません。これから不動産投資を行うなら、不動産クラウドファンディングから始めてみるのもよいでしょう。

 

 

執筆:悠木 まちゃ

ライター・編集者

宅建士・FP3級の資格保有。国立校の建築学科を卒業後、ハウスメーカーに勤務し、営業・設計職を担当。新築戸建て住宅のほか、事務所建築や賃貸アパートの設計などを手掛ける。

その後、2019年よりフリーライター・編集者として活動。実務経験を活かし、不動産・金融系の分野を中心に記事執筆から編集まで行う。多数の企業メディアで編集を担当するほか、ライター向けオンラインサロンの添削講師としても活動している。

 

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