超高齢化の中で、行き場を失った資産を活かすには?
「老老相続」という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。日本人の個人金融資産残高は過去最高の2,023兆円(2022年12月末・日銀2022年第4四半期の資金循環 (速報))と言われ、そのうち年間約50兆円の遺産の大半が60歳以上の方に相続される「老老相続」となっています。消費や投資行動が緩やかな世代間で資金移転が繰り返され、なかなか活きた形で資金が社会に巡らない状況が加速しているのです。
また、相続人がいない場合、残された資産は最終的に国庫に帰属することになります。2021年度には、その額も647億円と過去最高となりました(最高裁判所調べ)。
このような社会情勢の中、注目されている資産の活かし方が「遺贈寄付」「遺産寄付」です。老老相続のうち50兆円のわずか5%でも遺贈として公益法人やNPO法人、大学などへ寄付されて、社会課題の解決のための取り組みに活用されれば、毎年2.5兆円がさまざまな分野で活かされ、社会に還元されることになります。
遺贈寄付を遺言書に記して計画しておけば、どのような団体の活動に資産を受け継ぐか、自分の意志で「最期の社会貢献」として使い方を決めることができるのです。
遺贈先をどうやって決めるか
遺言書は認知能力にも問題がない元気なうちに作成しておく必要があるので、遺贈寄付を決めた場合でも、実際に寄付が実行されるのは、数十年あとになることがほとんどです。
そこで多くの方が悩まれるのが、どういう分野の団体に遺贈するとよいのか、その団体がずっと長く活動が継続できているか、安心して遺贈を託せる団体なのかどうかを、どのように調べればよいか、ということです。
遺贈先の選び方の手順のひとつとして
・具体的に支援したい団体があるか
・支援したい特定の分野や地域はあるのか
・遺贈寄付先は自分で選定するのか
という3つのポイントで整理し、まず活動分野から選んでみることをお薦めします。よく知られているNPOの分野としては、人道支援、子ども支援、医療支援、災害復興支援などがありますが、ほかにも自然環境保護や、文化・芸術・スポーツ・科学技術の振興や農山漁村の支援などもあげられます。
次に活動地域が海外か、日本全国か、地元の地域かなど、団体の規模や活動範囲を選択すると、少しずつ自分が支援したい団体が絞り込まれてくると思います。
自分で数多くの団体を直接調べるのは大変、という場合は、遺贈に関する中間支援団体や、遺言作成や執行者を担う弁護士や司法書士などの士業、遺言信託を取り扱う信託銀行なども、第三者として遺贈先の選び方の相談に乗ってくれるところがあります。
たとえば、全国レガシーギフト協会の「いぞうの窓口」では、「遺贈寄付の倫理に関するガイドライン」を作成し、このガイドラインを整備し遵守する遺贈先団体を分野ごとに検索できるWEBサイトを公開しています(https://izoukifu.jp/consideration/partner/)。
自然環境や動物愛護の分野では、環境保護に取り組む弁護士の団体「日本環境法律家連盟(JELF)」が、環境保護団体の組織の信用度を弁護士が調査し、報告書を公開して遺贈先団体を推薦する「みどりの遺言プロジェクト」(http://jelf-justice.net/project/index.html#02)なども参考になるでしょう。
そのほか、各団体が開催している終活相談会やオンライン終活セミナーに参加してみたり、少額のお試し寄付をして、注力している活動内容を確かめてみることなども体験され、遺贈先を選ばれている方もいらっしゃいます。
あなたの想いが守る、日本の自然の未来
先祖から受け継ぎ、ご自身で築かれた財産は、何よりもまず相続なさるご家族にとってかけがえのないものです。
その上で、社会や世界の未来への想いを、遺贈として遺していただければ、救われる多くの「もの・こと」があります。日本の自然も、その一つです。
日本で絶滅の危機にある生き物は、3,800種。この数字からも明らかなように、いま日本では次々と自然が失われています。身近な自然体験が減ることによる子どもたちの自然離れも見逃せません。防災やエネルギー問題を考える上でも、ライフスタイルの見直しや自然の力を活かす対策が迫られています。
私たち「日本自然保護協会」は、多くの方のご寄付を支えに、70年以上自然保護に向き合ってきました。日本には、日本に固有の自然があります。そのかけがえのないものを、しっかり未来に送り届けるために、私たちの活動に理解と共感をいただき遺贈をお考えいただければ、嬉しいかぎりです。