技術の発展とともに、日常生活でもロボットを目にする機会が増えてきました。活躍するロボットたちの外見は2種類に大別できます。「ヒト型をしているもの」と「していないもの」です。今回はヒト型ロボットにスポットを当て、開発の歴史や社会での役割について解説します。※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。
ロボットをヒト型にする必要性はあるか?次世代ロボット「Optimus」とペッパーくんが教えてくれること (※写真はイメージです/PIXTA)

「Optimus」はどうやって「手先の器用さ」を実現したのか

「Optimus」は人体を忠実に模倣したヒト型を追求することで「手先が不器用」という弱点を克服しました。一方で、重い荷物を持ち上げるにはヒトの形にこだわらない形状が有利という側面もあります。

 

日々多くのコンテナが運ばれる物流ヤードで活躍しているのはご存知のとおりクレーンなどの重機です。人間の腕力以上の力仕事を可能にしたい場合、ヒト型は不利にはたらきます。ですが、「Optimus」はこの課題もクリアしています。

本来ヒト型ロボットは重いものをもつのは苦手!「Optimus」が力もちの秘密

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

人間が重量のあるものを持ち上げるには膝の屈伸運動が重要です。そのため、ヒト型をしているロボットは「人間と同じ滑らかな膝の屈伸運動を、どれだけ人間以上の強度(耐性)で行うことができるか」が焦点になります。

 

「Optimus」の膝は、人間の膝の前に付いているお皿のような骨「膝蓋骨(しつがいこつ)」に相当するパーツに、4つの棒状のモーターパーツを組み合わせることで、人間の膝関節を再現しています。

 

従来のヒト型ロボットはお皿のパーツの中心にモーターを回して屈伸運動を再現していましたが、この方式では直立しているときと膝を曲げきったときに最も回転数が必要であるという問題点がありました。一連の動作に必要な回転数が定まらず、むらがあると、強度をあげるのが難しいからです。

 

そこで「Optimus」は回転モーターではなく、伸縮モーターで4つの棒状パーツを動かすことで、一連の動作に必要なエネルギーを一定に保ち、強度をあげることを叶えました。なんと、グランドピアノの重さである500kgのものを繰り返し上げ下げすることが可能です。

 

実際に、テスラ開催の人工知能イベント「テスラAIデー2022」では、グランドピアノをホールドしたバンドを関節パーツが持ち上げるというデモンストレーションが行われました。

大活躍したペッパーくんがヒト型の理由は?

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

ヒト型ロボット史上、もっとも印象に残っている存在の1つが「Pepper」ではないでしょうか。Pepper(以降、ペッパー)くんは、2014年に世界初の感情認識人型ロボットとして登場しました。

 

ペッパーくんがヒトの形をしていることについて、サービスを提供するソフトバンクロボティクスは「(人間は)本能的に、『心を通わせる存在とともに暮らしたい』」という情緒を求めている」と説明しています。人間が行う動作を再現するためにヒトの形をしている「Optimus」とは対照的な理由です。