10年前とは一変…最新技術を駆使した美容医療のいま
およそ10年前とは大きく事情が変わっている美容医療。AIなどの最新技術は、美容医療にどのように活用されているのでしょうか。
「高機能肌診断器」はシミの“予備軍”まで解析可能
美容医療において効果的な治療をするためには、「正確な診断」が不可欠です。「VISIA(ビジア)」をはじめとする高機能肌診断器は、肌のキメや毛穴、シミなどについて1万人を超えるデータベースと比較し、自分の肌の状態を客観視することができます。
「VISIA」は白人、黒人、アジア人と多様な人種のデータが蓄積され、最新のものは男性のデータも追加。撮影ポジションがずれても解析誤差を防止できるなど、年々進化を続けています。肉眼で見えるシミだけでなく、将来的にシミになりそうな“予備軍”まで解析できるため、早めのアプローチが可能になりました。
「シミは紫外線によるものだけでなく、女性ホルモンの乱れが大きな要因とされる肝斑(かんぱん)やアザの場合もあります。最新の高機能肌診断器は、肉眼で見えない部分までカバーしてくれます」
紫外線によるシミと肝斑は見わけが難しい場合があり、治療法を誤ると悪化させてしまうこともあるといいます。
「紫外線によるシミは、強い出力のレーザーを照射することで取り除きます。ところが、肝斑にそのような出力でレーザーを照射すると、逆に黒ずむ恐れがあります。診断の精度が上がれば、治療のリスクも最小限に抑えられ、1人ひとりに合ったよりよい治療を提供できるようになるのです」
シミ治療に使うレーザーのテクノロジーも進化を続けています。シミは、紫外線に反応し肌の細胞内部でメラニンが生成されることで表出しますが、最新のレーザーはこのメラニンに反応し、熱でメラニンを破壊してシミを除去することが可能です。
「以前は「Qスイッチレーザー」が主流でしたが、現在は「ピコレーザー」のほうが副作用が少なく好まれています。Qスイッチレーザーとピコレーザーの違いは、レーザーを肌に当てている時間の差です。
Qスイッチレーザーがナノセカンド台であるに対し、ピコレーザーは1/1,000も短いピコセカンド台という短さ。照射時間が少ないため肌を傷つけるリスクが大幅に減り、治療する際に肌をテープで保護する必要もありません。
また、治療後の色素沈着を起こす人も劇的に減りました。体感的には、7~8割の患者さんに起きていた副作用が、1~2割に減りましたね。高いテクノロジーを持った機器の開発で、より安全で効果の高い美容医療が実現しつつあります」
技術×再生医療の応用で「自ら美肌」に
手軽に肌を美しく見せたいという顧客の願いを受け、メイク用品の進化も目覚ましいものがあります。花王が開発した「ファインファイバー技術」は、極細の繊維を肌に直接吹き付けることで、肌の表面に極薄の膜を生成。肌を完全に密閉せずに透湿性を保つことができ、メイク崩れしにくいことから、大きな注目を集めています。
他方、美容医療でいま注目されているのが、皮膚を再生させる因子が豊富な「ヒト幹細胞培養上清液」という物質。
「これらを点滴や注射で肌に導入することで、コラーゲンをはじめとした健康な肌の維持に欠かせない栄養素を、自らの力で再生できるようになります。形成外科分野では、ヤケド跡の治療時などに『シート状の人工皮膚を肌に貼りつける』という方法が活用されていますが、美容目的ではまだ行われていません。今後は最新機器と再生医療を組み合わせ、より効果的な肌治療が期待できそうですね」