全国的に「子どもの自然体験」は低水準
子どもの自然体験についての全国的な調査の結果からは、年々子どもの自然体験が乏しくなっていることが明らかとなっています。子どもが過ごす生活環境自体が変化していて、都市開発のせいか、昔にくらべて身近な自然が少なくなっています。さらに、自然が豊かなはずの地方でも、子どもの自然体験は都市部と大差がないという調査結果が出ています。つまり今の子ども達は、シニア世代や親世代の幼少期よりも自然に触れにくい環境に置かれているのです。
家庭の境遇によって「子どもの自然体験」にも格差
日本では、世帯収入が低い家庭ほど子どもの様々な生活体験が少ない傾向があります。そして教育・体験の差が、学歴の差、そして大人になってからの年収の差にまで影響することがわかっています。このような貧困の連鎖は今大きな社会問題になっています。
幼少期の自然体験も、子どもの自己肯定感や学力に影響する要素の一つです。特に小学校低学年までの自然体験や動植物との関りが、その後の人生に影響を及ぼすことが分かっています。しかし自然体験についても、年収が低い家庭で少なくなっています。
金銭面だけでなく時間的にも精神的にも余裕がない家庭では、「子どもに自然体験をさせたい」と思ってもそれが叶わない場合があるのです。例えば、全国のひとり親家庭の50.8%は相対的貧困*にありますが、親が家族を食べさせるために毎日働かざるを得ない場合が多々あり、疲れ果ててしまうという深刻な状況もあります。
ひとり親でなくても、両親のどちらかが病気で動けなくなってしまうと、たちまち家庭の状況は変化します。日本では誰でも、いつでもこういった状態になる可能性があると、私たちは感じています。日本自然保護協会では、このような家庭の子どもたちが、通常の自然観察会に参加しにくい層の一つだと考えています。
すべての子どもが通う「学校」での自然体験を増やそうとする取り組みもあります。しかし、学校現場は多忙を極めており、よほど意欲的な教師と理解がある学校でない限り、自然体験を増やす余裕はほとんどないのが現状です。そして、コロナで社会が受けたダメージにより、さらに余裕のない家庭は増加することが予想され、家庭の境遇による子どもの自然体験の格差はますます広がる可能性があります。
*相対的貧困とは、家庭で使えるお金がその国の中央値の半分に満たず、国の文化・生活水準と比較して困窮した状態のことと定義されています。日本は、人口に対して相対的貧困に該当する人を割合にした「相対的貧困率」がOECD加盟国の中で10番目に高い国で、おおよそ7人に1人の子どもが相対的貧困にあります。日本は先進国の中でも所得格差が大きく、長期的にその格差は拡大傾向にあるのが現状です。
すべての子どもが豊かな人生を送る礎となる自然体験を
子どもたちにはずっと幸せに暮らしてほしい。そのためには豊かな自然環境を持続できる「自然の原体験」が子ども自身に必要です。特に、世界の見方の土台が作られる乳幼児期の自然との接し方が、人生に長く影響すると私たちは考えています。この時期の自然体験は心や体の成長も促すため、すべての子どもに自然を届けたい。
日本自然保護協会は、すべての子どもが豊かな人生を送る礎となる自然を守り、自然体験をする機会を作る活動を進めています。
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今回ご紹介したテーマをはじめ日本自然保護協会の活動のすべてが、多くの方からのご寄付に支えられています。
個人からの保護プロジェクトへのご寄付や、SDGsやESG投資に積極的な企業からの協賛寄付のほか、相続に向けた「遺贈寄付」「相続財産寄付」でご支援をいただく方もいらっしゃいます。
大切な資産をどのように未来へつなげていくかは、それぞれ想いやご事情が異なり、必要な手続きもさまざまです。日本自然保護協会では、法務・税務・終活等の専門家と連携し、丁寧かつ慎重にご相談を重ね、ご寄付を最適な形で実現するためのサポートを行っています。
なお、日本自然保護協会への遺贈・相続財産寄付は、期限内の申告で非課税となります。また、所得税・法人税の税制優遇の対象です。土地建物や有価証券のままでのご寄付や、包括遺贈、相続人不存在への予備的遺言もご相談を承ります。