世界の富裕層が注目する「オルタナティブ投資」は収益性が高い半面、流動性、換金性が低いという特徴もあります。一方で、日本の投資家は短期の運用商品を好む傾向があります。オルタナティブ投資のメリットを得るためには中長期の視点で運用する必要があります。

中長期の運用が「オルタナティブ投資」の特徴

オルタナティブ投資で重要なことは、中長期の視点で運用、資産形成することだと考えています。最低でも中期の目安は1~3年、長期は3~5年です。

 

しかし、日本の個人投資家は短期運用の商品を好む傾向があります。さらに、日本でのオルタナティブ投資は一般の個人投資家にまだなじみが薄く、はじめてオルタナティブ投資される方や経験の浅い投資家にとって1年以上の商品に投資することには不安があります。それは当然のことだと私たちも理解しています。

 

さらに、オルタナティブ投資の一つであるソーシャルレンディング(投資型クラウドファンディング)は新しい業界であるうえ、これまでに業界を代表する企業が不祥事を起こして事業から撤退するケースがありました。オルタナティブ投資に対する投資家からの信頼は、業界としてまだ十分に醸成されているとはいえません。

 

山口慶一 SAMURAI証券代表取締役社長
山口慶一 SAMURAI証券代表取締役社長

 

そうしたなかで、現在、当社のオンラインのオルタナティブ投資プラットフォーム「Alterna Bank(オルタナバンク)」で扱っている商品は少額でも投資できるように小口化し、さらに3~6カ月、長くて1年という短期の商品です。「オルタナバンク」が提供する商品は、オルタナティブ投資にエントリーしやすい入門用と位置づけています。

 

まずはここからスタートし、少しずつ慣れてきたら中長期の視点で運用し、よりよい資産形成していただきたいと願っています。

短期運用では収益を期待できる商品が限られる

現在、「オルタナバンク」で扱っている商品には2つの特徴があります。1つは本来大ロットの金額でしか投資できない商品を小口化していること。もう1つは運用期間が短いということです。

 

この2点のうち。投資金額の小口化については、当社独自のスキームで小口化して少額投資を可能にしています。当社は今後もこの方向性を維持していく方針です。金額的に投資しやすい商品を提供することは、多くの個人投資家にとって価値があると考えるからです。

 

一方、投資期間が短いということは、個人投資家にとって投資しやすいメリットがある半面、デメリットもあります。

 

たとえば本来、3年単位で見れば大きな利益が期待できる商品であっても、6カ月に短縮する利幅が小さくなり、あるいはほとんど利益が期待できないケースも少なくありません。3年の商品の場合、収益の上昇カーブが最初(1年以内)は緩やかで、後半(2~3年)になって大きく上向く商品が数多くあるからです。

 

そうすると、3年間で見れば大きなリターンが見込める商品であっても、短期間では利益が見込めないため、当社としては商品化することができません。したがって大きな利益が見込める商品であっても扱うことができなくなります。

 

 

現在、「オルタナバンク」では短期間でも供給可能な商品を厳選したうえで、当社独自のスキームで小口化して提供しています。今後、個人投資家の方に中長期の視点で運用していただくことができれば、当社が扱えるオルタナティブ商品の幅は大きく広がり、より多くの魅力的な商品が提供可能になると考えています。

 

中長期の運用により、オルタナティブ商品のラインアップが拡充することは、もう1つ大きな意味があります。

 

ソーシャルレンディング業界は参入企業の増加とともに、個人投資家も着実に増え、投資ニーズは高まっています。

 

しかしその一方で、商品の供給が追いついていません。業界トップクラスの企業を含め、商品を出したら即完売する状態が当たり前になっています。販売してもすぐに売り切れてしまうので、各社のプラットフォームの棚には商品が並んでいないことが常態化しています。

 

また、抽選制を取り入れている企業も多いので、個人投資家の方が投資したいにもかかわらず落選して投資できない事態が普通に起きています。

 

個人投資家の方々の期待に応えられていないこうした状況は、業界として極めて不健全だと認識しています。

中長期で運用できれば高い利回りが期待できる

そのため当社としては日本国内だけでなく、海外にも目を向けて、商品提供できる体制づくりに努めてきました。当社の商品供給力や特徴、強みなどは別途ご説明しますが、自社の資金で大ロットの商品をあらかじめ抱えるなど独自に磨き上げてきた手法を駆使し、オルタナティブ商品の安定供給を目指します。

 

オルタナティブ投資プラットフォーム「オルタナバンク」に来ていただければ、常に投資ができる環境を整える努力をしています。そのためにも、前述したように個人投資家の方々には1~3年以上の中長期の投資に目を向けていただきたいのです。

 

第1回でハーバード大学基金の成功例をもとに、個人投資家は中長期の投資に適していることをご説明しました。オルタナティブ投資は収益性が高い半面、流動性が低いというデメリットもあります。急に現金が必要になった時など、すぐに売却できないリスクがあります。

 

しかし、ハーバード大学基金は卒業生らからの寄付金をもとに、中長期を前提に運用しています。流動性を強く意識する必要はありません。

 

これは個人投資家も基本的に同じだと考えています。個人投資家は通常、金融機関からの借入れで1年以内に返済しなければならないような資金を投資や運用に回すことはないはずです。余裕資金で運用しているので、短期の商品だけではなく、中長期の商品にも投資しやすいと思います。

 

オルタナティブ投資は、高い利回りを期待できる商品が数多くあります。特に中長期で運用すれば、そのラインアップは格段に広がり、個人投資家の方に投資のチャンスもまた広がります。

 

個人投資家の方々には、ぜひ中長期でのオルタナティブ投資に目を向けていただき、よりよい資産形成、資産運用につなげていただければと思います。