急激なインフレ、株式市場の下落、世界的な混乱から富裕層でさえ不安を抱いています。株式も債券も暴落しているいま、「オルタナティブ投資」の魅力が増しています。流動性・換金性が低い代わりに潜在的なリターンが大きく、経済動向の急激な変動の影響を受けにくいといわれている「オルタナティブ投資」はどのような投資なのでしょうか。

米国ではオルタナティブ投資が一般投資家に浸透

第1回は、「オルタナティブ投資」が世界的に注目されていることを述べるとともに、具体例として米国の名門・ハーバード大学基金の資産運用について紹介しました。ハーバード大の資産ポートフォリオをみると、全体の74%(2021年度)をオルタナティブ投資に振り分けています。そして2021年6月時点で残高は532億ドルあり、平均利率は約11%という高さを実現しています。

 

ハーバード大学ほどではないにせよ、日本を含む世界中の機関投資家らが、資産運用ポートフォリオに一定の割合(約2~3割)でオルタナティブ商品を組み入れています。それは「伝統的資産」と呼ばれる上場株式や投資信託、債券といった金融商品以外のオルタナティブな商品(不動産、未上場株式、デリバティブなど)に投資することで、リスク分散すると同時により高いパフォーマンスを目指します。

 

オルタナティブ投資の特徴は流動性・換金性が低い代わりに潜在的なリターンが大きく、経済動向の急激な変動の影響を受けにくいため、中・長期的な運用や将来に向けた資産形成の手段として注目されています。

 

ただ、オルタナティブ投資は、未上場株式や金銭債権など一般のマーケットに出回らない金融商品のため、日本では個人投資家が手を出しにくい商品です。そのため日本の一般投資家の間では「オルタナティブ投資」はなじみの薄いものとなっています。

 

しかしながら、世界に目を転じると、多くの個人投資家がそれらのオルタナティブ商品に投資を行っています。

 

山口慶一 SAMURAI証券代表取締役社長
山口慶一 SAMURAI証券代表取締役社長

 

特に米国では一般投資家に浸透しています。機関投資家や富裕層が投資している実績のあるオルタナティブアセットに対して、まとまったロットでアクセスして、それを小口化して一般投資家に販売するオンライン投資プラットフォームを運営する企業が多く存在します。

 

代表的なのがYieldstreet(イールドストリート)やCroudstreet(クラウドストリート)などです。

 

イールドストリートは、プライベートエクイティ、ベンチャーキャピタル、アート、不動産金融など幅広いオルタナティブ投資に対して、個人投資家のアクセスを可能とするプラットフォームを提供しています。

 

クラウドストリートは、投資用不動産と、その不動産に投資をする投資家をマッチングするサービスです。また、投資家が投資資金を集めるためのクラウドファンディングのサービスも提供しています。

 

米国の不動産ファンドでは、こうしたオルタナティブ投資プラットフォームを通じて、多額のリテールマネーが集まっており、非常に巨大なマーケットを形成しています。

 

ちなみに、イールドストリートの投資実績は30億ドル(約3900億円)、クラウドストリートの投資実績は39億ドル(約5070億円)となっています。

安心・安全性の高い商品を厳選して提供

このようにオルタナティブ投資は世界的に注目され、実際、大きなパフォーマンスを上げています。

 

たとえば、オルタナティブ投資の代表的な一つであるプライベートエクイティでは、未上場株式の純資産価値が世界的に上昇しています。そして、上場企業全体の時価総額を上回るペースで成長しているのです。

 

同時にユニコーン企業も増加しています。ユニコーン企業とは企業の評価額が10億ドル(約1300億円)以上で、非上場のベンチャー企業を指します。現在は上場しているフェイスブックやグーグルも、かつてはユニコーン企業でした。

 

 

これまで述べてきたように、オルタナティブ投資は多彩です。上場株式や債券などの「伝統的資産」以外はすべてオルタナティブ商品に分類されます。

 

オルタナティブ商品には、伝統的資産に比べて「インフレに対して強い」「下落局面に抵抗力がある」などの特徴を持つものが多く存在します。もちろん、伝統的資産に比べて流動性や換金性が低いといったデメリットもありますが、個人投資家でもポートフォリオの一部をオルタナティブ投資にすることでリスクヘッジができ、中長期的な資産形成につながります。

 

日本の一般投資家にはほとんど知られていなかった、また参加が難しかった巨大なオルタナティブ投資マーケットを、広く門戸を開放することを私たちSAMURAI証券は目指しています。

 

SAMURAI証券が手がけるのは、未公開株で大きなリターンを狙うような金融商品ではなく、プライベート・クレジット・ファンドや貸付債券・社債、不動産など年利4~8%程度を手堅く出せるアセットを中心に、安心・安全性の高い商品を厳選して提供していきます。

 

具体的な内容は連載の中で詳しくご説明しますが、当面は世界中の機関投資家が投資しているような優良なオルタナティブアセットに積極的にアクセスしていき、日本の一般投資家に向けてファンドのリテール開放を進めていく方針です。

 

そのためにオンラインのオルタナティブ投資プラットフォーム「Alterna Bank(オルタナバンク)」を提供しています。これは前述のイールドストリートやクラウドストリートなど米国企業のオルタナティブ投資プラットフォームを参考にしつつ、日本市場で最適な運営が行えるように設計した当社独自のプラットフォームです。

 

ソーシャルレンディングや不動産クラウドファンディングなど、日本にもオルタナティブ投資を部分的に手がけている企業は多数存在しますが、オルタナティブ投資プラットフォーム「オルタナバンク」は、日本で最初のオルタナティブ投資を網羅するプラットフォームとして価値を示していければと思っています。

 

「オルタナバンク」は、米国のYieldstreetやCroudstreetなどのように、世界の機関投資家が参加するレベルのオルタナティブアセットに、日本の個人投資家が小口で参加できる、真の意味でのオルタナティブ投資のプラットフォームを目指しています。

 

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