本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。我々の生活に比較的身近なテクノロジーについての紹介・説明記事や、よりよい体験をもたらすためにテクノロジーを用いているモノやサービスについての情報を発信しています。第4回目は、金融業界において、特にAIが使用されるケースが多いレンディング(融資)ビジネスを取り上げ、今後私たちのお金や暮らしにどのような影響を与えうるのか、分かりやすく解説していきます。
融資は「信用スコア」でAIが決定?「AIレンディング」の広がる可能性 (※写真はイメージです/PIXTA)

日本企業の事例

 

AIを用いた与信管理は、国内でも徐々に成功例が出てき始めています。

 

・1番の成功例「LINE」

 

メッセージングサービスを手掛けるLINEは、金融子会社のLINEフィナンシャルとみずほ銀行、オリエントコーポレーションの3社が設立したLINE Credit社を通じて、信用スコアサービスのLINE Scoreと個人向け無担保ローンサービスのLINE Pocket Moneyを提供しています。

 

LINE Scoreでは、ライフスタイルに関する15の質問と、LINEサービスの使用状況を元にAIでスコアを算出しています。そのスコアをLINE Pocket Moneyの与信管理に活用、また融資だけでなく、スコアをもとにお得なクーポンやキャンペーンも提供しています。

 

LINE Pocket Moneyは2019年にサービスを開始し、2022年3月時点で累計100万件の申し込みと500億円の貸付実行額を記録しています。この成功の要因の一つには、LINE Scoreによる「正確な与信管理」が挙げられることは間違いないでしょう。

 

・一方でこんな事例も…「J.Score」「Yahoo! スコア」

 

J.Scoreはソフトバンクとみずほ銀行の共同出資で設立され、2017年よりAIによる信用スコアの算定、それを元にした一般消費者向けレンディングである「AIスコア・レンディング」を行ってきました。

 

日本における初の信用スコアとして話題を集めましたが、2022年12月にサービスの終了を発表し、コア技術やノウハウはLINE Creditに統合するとしました。

 

また、インターネット検索大手のヤフーが提供するYahoo!スコアも2019年6月に開始され、翌年8月にサービスが終了しています。

 

日本初の信用スコアサービスとして話題となったJ.Scoreや、誰もが使う巨大サービスであるヤフーでさえも上手くいかないというのはこのビジネスの難しさを物語っているといえるでしょう。

 

LINE、J.Score、ヤフーはすべてソフトバンクの傘下です。同社は芝麻信用を展開するアリババと深い関係を持っています。信用スコアとそれに付随するレンディングのビジネスは、日本で将来的に大きく育てていきたい事業なのだと考えられます。