本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。我々の生活に比較的身近なテクノロジーについての紹介・説明記事や、よりよい体験をもたらすためにテクノロジーを用いているモノやサービスについての情報を発信しています。第3回目は金融業界に用いられているブロックチェーン技術が、子どもたちの教育にどのように活用できる可能性があるか? ついて解説します。
子どもと将来の夢をAIがマッチング!未来を拡張するブロックチェーン (※写真はイメージです/PIXTA)

変革期を迎えた、教育現場

現在、教育現場は大きな変革期を迎えています。たとえば、2022年4月から、高校の家庭科の授業で「金融教育」がスタートし、資産運用や投資について学ぶ機会が設けられています。

 

早い時期から金融リテラシーを身に付けることは、人生設計における視野を広げ、QOLの向上に役立ちます。また、自ら資産形成の知見を得て、将来のために投資できる教育資金を増やす可能性を模索できることは、職業の選択肢を増やすことにも繋がります。

適応学習(アダプティブラーニング)とは?

また、こうした学習内容の改訂のみならず、学習の仕方そのものの改革の研究も進められています。例えば、文部科学省では適応学習(アダプティブラーニング)を推奨しています。適応学習とは、学習者の理解度などに合わせて、適切な出題内容や学習プランを、テクノロジーを活用して調整し、効果的に学習できる方法です。

 

同じ授業を、同じ量、同じタイミングで、みんなで一緒に同じ場所で受けるという、従来の教育スタイルの対極にある指導方法です。

 

これまでのように子どもがカリキュラムや学習環境に合わせるのではなく、カリキュラムや学習環境を子どもに合わせることで、ひとりひとりの資質や能力(スキル)を、効果的かつ効率的に伸ばすことが期待できます。適応学習には「速度」「内容」という2つの切り口があり、子どもたちひとりひとりの個性や能力、また、志望する職業などに応じて、学習の速度と内容を調整します。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

小さいようで大きい「教育格差」を埋められる「AI型教材」

一つ目の「速度」について説明しましょう。「速度」のアダプティブ(適応)を可能にしたのがタブレットやスマートフォンなどで学ぶ「AI型教材」です。

 

テクノロジーを用いて教育サービスを提供するエドテック(Education(教育)とTechnology(技術))を組み合わせた造語)は近年、右肩上がりに市場規模を拡大しています。

 

(引用元:野村総合研究所「EdTech市場の現状と課題」)

 

上記の図表のとおり、2016年には1,691億円だった市場規模が、2022年には2,958億円まで成長しました。新型コロナウイルス拡大によりリモート授業が急速に普及したことも追い風となり、この6年間で75%増加しています。

 

「AI型教材」は、AIが生徒ひとりひとりの習熟度に応じて最適な問題を出題してくれるのが大きな特徴です。問題の「間違え方」は人それぞれです。問題解決に導くロジックにも、個性や思考グセがあります。それらをAI (人工知能)が解析し、数万問もの膨大なデータベースから、一人ひとりに個別最適化された問題を出題してくれるのです。

 

「AI型教材」はアダプティブラーニング(適応学習)に有効なだけでなく、画期的な長所がたくさんあります。例えば、文房具を購入する費用や労力、文房具を出し入れする手間などを省き、効率的に学習時間を確保することができます。

 

また、病気やけが、障害などで身体の可動域や活動時間に制限のある子どもたちの、学習へのハードルを下げることも可能です。

 

さらに、業務過多や過剰労働が度々問題視される教職員の負担軽減にも繋がります。もちろん、ペーパーレスなのでサスティナブルな地球環境への配慮にもなります。