(※写真はイメージです/PIXTA)

投資家から集めた資金を企業に貸し、その利息等を投資家に還元する「融資型クラウドファンディング」。この画期的なサービスを提供する株式会社バンカーズは、サービスの提供者側と投資家側との「情報格差」を解消すべく、「透明性の高さ」にこだわった商品設計を行っています。その背景や具体的な開示方法、また投資家自身に求める姿について、同社の代表取締役である澁谷剛氏にお話を伺います。

「情報の非対称性」解消へ…バンカーズの徹底した姿勢

市場で取引される商品やサービスに関して、よく指摘されるのが「情報の非対称性」の問題である。情報の非対称性とは、商品やサービスの「売り手」と「買い手」が保有する情報の格差のことだ。

 

一般には、売り手が専門的な知識や情報を豊富に所持する一方、買い手は情報に乏しく、売り手からの説明に依存するしかない。このとき、売り手がどの程度の情報提供を行うのかは売り手側の判断に委ねられ、すべての情報を正確に提供してくれるとは限らない。

 

このように、ある取引において、保有する情報が両者で対等でなく「情報優位側」と「情報劣位側」が存在している状況が、情報の非対称性だ。

 

この非対称性が大きくなると、買い手側は製品やサービスの購入を控えるようになり、市場の取引が活性化しなくなることがあるといわれている。

 

2020年12月に開始された融資型クラウドファンディングサービス「Bankers(バンカーズ)」を運営する株式会社バンカーズは、ファンドの内容について他社では公開されないような情報も、積極的に公開している。

 

その理由として、ファンドの運営事業者と個人投資家側の情報の非対称性を極力解消したいためだと澁谷剛社長は語る。

 

澁谷氏「ソーシャルレンディングも、株式投資などと同じように、投資家が自分で情報を読み込んで投資するような健全な金融サービスに育ってほしいという思いがあります。そのためには、私たちは十分な情報を開示しなければならず、当社は『透明性の高い』ファンド設計に努めています。過去に不祥事を起こしたソーシャルレンディング運営業者は、投資家にとって重要な情報の開示に後ろ向きでした」

 

「ソーシャルレンディングも株式投資などと同じように、投資家が自分で情報を読み込んで投資するような健全な金融サービスに育ってほしい」と語る株式会社バンカーズ代表取締役社長 澁谷 剛氏
株式会社バンカーズ代表取締役社長 澁谷 剛氏

バンカーズが行う「透明性の高い情報開示」とは

バンカーズではどのような情報開示を行っているのだろうか。具体的にみていこう。

 

バンカーズのファンドは、最初に「ファンド概要」が掲載されている。当該ファンドのスキーム図をはじめ、予定利回りなどの諸条件といった大まかな説明が記されている。

 

次の「プロジェクト概要」では、融資事業概要、融資事業スキーム図、リスク分析、担保・保証などが詳しく書かれている。

 

澁谷氏「融資事業スキーム図は、当社のノウハウの塊といっても過言ではありません。融資の仕組みの裏の裏まで開示しています。複雑な案件ほど細かな契約がたくさんありますが、それらを可能な限り明らかにしており、同業他社はもちろん一般の金融機関でもこれほどのノウハウを開示しているケースはほとんどないと思います」

 

リスク分析では、融資先信用力や担保保証などをバンカーズが独自に分析し、その説明とともにリスクの大きさを「大(0)」から「小(5)」まで、それぞれ「2.4」「3.7」など具体的な数字で表している。数字が大きいほどリスクが小さくなる。

 

さらに、「リスク・管理態勢」というページがある。ここには当該ファンド特有のリスクについて説明がされている。たとえば「フリーランス事業支援ファンド」では、「借手が破綻した場合」「サービス利用者および第三債務者が破綻した場合」「借手、サービス利用者および第三債務者が破綻した場合」の3つに分け、それぞれのケースでどのようにすれば元本の毀損を免れるかを説明している。

 

澁谷氏「リスクに関して当社ほど詳細に記しているクラウドファンディング運営業者はないと思います。もちろん、リスクを詳細に説明しても、それで100%安心・安全ということではありませんが、できる限りの保全措置をとり、リスクを極力低くする仕組みを整えていることが理解していただけると考えています」

 

「Bankers(バンカーズ)」は、リスクも含め詳細に情報開示を行っている
「Bankers(バンカーズ)」は、リスクも含め詳細に情報開示を行っている

 

投資家はこうした多くの情報に基づき、適切な投資の判断が行えるというわけだ。

豊富な情報と顧客自身の目利き力で「貯蓄から投資へ」

ただ、豊富な情報は投資家にとって極めて有意義なものである一方、金融の知識に乏しい一般の個人投資家にとって、開示された情報を読み解き、理解するのは容易でないのではないか。

 

澁谷氏「たしかに複雑な融資事業スキーム図などは、金融に携わるプロでも、かなり真剣に読まないと理解できないかもしれません。ただ、冒頭で述べたように、私たちはファンドの運営事業者と個人投資家側の『情報の非対称性』をできるかぎり解消したいと考えています。そのためには、まずは私たちが十分な情報開示を行う必要があると考えています」

 

一方澁谷氏は、投資家側にも金融リテラシーの向上を期待している。

 

澁谷氏「日本人の多くが金融について学ぶことを面倒に思っているため、1,000兆円もの個人金融資産が預貯金に預けっぱなしになっているのではないでしょうか。融資型クラウドファンディングによって、資金を3~5%で安定的に運用するためには、開示されている情報を理解して、投資家本人がきちんと判断したうえで投資していただくことが、双方にとってプラスになると考えています。

 

もちろん最初は難しいと思いますが、少しずつ勉強することで投資の『目利き力』(投資判断力)が高まり、投資家の方々は幸せなリターンを得続けられるようになると思います。私たちが提供する情報を少しでも役立て、投資の目利き力をつけていく関係性ができたら、とてもすばらしいなと私たちは思っています。

 

貯蓄から投資へ…「投資家自身が『目利き力』をつけることで、幸せなリターンを得続けられるようになる」と語る澁谷氏
貯蓄から投資へ…「投資家自身が『目利き力』をつけることで、幸せなリターンを得続けられるようになる」と語る澁谷氏

 

そして、お客さまが自分の目利き力によって投資を行い、仮に損失が発生したとしても、自己責任として納得できるような、株に近い投資になってほしいと願っています。

 

金融機関の多くは、そんな詳しい情報を出しても、一般投資家は理解できないのだからムダだと考えているようですが、私たちは愚直にやっていく方針です。それは日本全体が『貯蓄から投資へ』と向かうためにも、重要な使命であると考えています」

 

TOPへ