円だけじゃない! あらゆる通貨に対して高騰するドル
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今年に入って、ドルの価値が急騰しています。日本円に対しては昨年末から+18.8%、連日◯年ぶりの水準と報じられています。日本では「円安」として語られることが多い為替状況ですが、対円のみならず、ユーロやポンドに対しても約10%、その他の通貨に対しても軒並み大幅に高騰しており、「ドル高」と認識するほうが実態を正しく捉えていると言えます。
この「ドル高」の要因はいろいろと考えられますが、最も影響が大きかったのは、パンデミックからの立ち直りの早さでしょう。他国に先駆けて景気が回復し、それに伴い、いち早く利上げに踏み切りました。
堅調な経済に対する成長期待が、アクティブな投資家たちに、株や不動産などのドル建て資産を買わせました。さらに、利上げにより利回りが高まった国債やMBS(Mortgage Backed Securities:不動産担保証券)などの資産に、慎重な投資家たちが動きました。ドル建て資産が他の通貨建て資産よりも魅力的になることで、ドルの需要が増したのです。
また、ウクライナ情勢による社会不安も、強い軍事力を持つアメリカ経済の追い風になっており、ドル高を維持する原動力になっています。
しかし、この為替が永遠に続くわけではありません。時期の予想こそ難しいものの、やがてドル高が沈静化していくことはほぼ間違いないことだと経済学者たちは考えているようです。そのシナリオは2つです。
シナリオ.1 他国の利上げ
1つは、他国も利上げに踏み切ることで、国債利回りに差がなくなることです。現に欧州中央銀行は7月21日に0.5%引き上げました。これは事前に理事会が示唆していた0.25%の2倍の引き上げ率で、想定以上の速度で進むインフレ速度に対する危機感の強さを示しています。ラトビア中央銀行の総裁で欧州中央銀行メンバーのカザークス氏は「9月の利上げも大きな規模で行う必要がある」と述べ、今後急速に利上げを進めていくことが確実視されています。
日銀については現任の黒田総裁こそ利上げを行わないことを明言しているものの、目標の2%を超えたインフレ率と、深刻な円安に見舞われている状況を利上げなしで乗り切るのはほぼ不可能です。黒田総裁の任期は2023年4月までということもあり、少なくとも後任者が利上げを行うことはほぼ確実視されています。
そのほかにも、インフレに見舞われており、かつ利上げに耐えうる経済基盤を持つ国は多数あります。これらの国々が本格的な利上げを開始し国際利回りが上昇すれば、米国債の魅力は相対的に薄まり、ドルの需要も分散していくはずです。
シナリオ.2 米経済の失速
2つ目のシナリオは、アメリカの経済にブレーキがかかることです。というのも、アメリカ経済の回復の早さの背景には、歴史的な低金利があったからです。低コストで資金調達できることで企業は投資を増やし、有利な条件で住宅ローンを組めたことで不動産市場が活発になっていました。利上げがはじまった今、すでに企業投資は減速し、住宅購入件数も鈍り始めています。
それにより、インフレが緩和されつつあるため、利上げは正しく機能していると言えますが、長期間利上げが続けば景気悪化に繋がりかねません。そうなれば、EFDは利上げの手を緩めざるを得ず、国債やMBSの利回りは低下してきます。景気が悪化しているわけですから、株や不動産への投資も減速します。こうなると、ドルの魅力が低下し、為替にも反映されることでしょう。
ドル以外が上がるか、ドルが下がるか
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2つのシナリオを端的に言えば、ドル以外の魅力が増すか、ドルそのもの魅力が損なわれるか、いずれかの状況になれば「ドル高」は終局していくということです。そうなることがあるのか、あるとすればいつなのか。それを事前に読み切ることは経済学者にも難しいことですが、消費者物価指数や不動産価格、雇用統計などをヒントにすれば近況を掴むことはできます。遠い未来を読もうとするとギャンブルになってしまいますが、直前に波に乗る(あるいは波から降りる)手法なら、それなりの精度で予想がつきます。ぜひ、客観的な経済指標をご活用ください。