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仮想通貨ブームのなかで新しい投資先として注目を集めるビットコインですが、通貨としての価値が気になっている方もいるのではないでしょうか。ビットコインをはじめとした仮想通貨には多くのメリットが存在するため、すでに法定通貨として採用している国も現れています。
本記事では、実際にビットコインを法定通貨化した国の実例やメリットを解説します。法定通貨の定義など基本的な知識も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1. 法定通貨とは
2021年6月に、エルサルバドルがビットコインを法定通貨にする決断を下しました。世界初の極めて先進的な国策に世界中が注目し、仮想通貨の支持層からは高い評価を受けたようです。
一方で、ビットコインには法定通貨の適性に欠ける部分があるとして、さまざまな批判の声もあがりました。そもそも法定通貨とは、どのような意味のある言葉なのでしょうか。本項では、法定通貨のポイントを詳しく解説します。
1.1. 法定通貨の定義は「強制通用力」を持つかどうか
法定通貨の定義は「強制通用力」を有することです。強制通用力とは、通貨に表示されている数字の価格をもって、決済を完了できる力を指します。
たとえば、物の売買において、買い手が法定通貨を使用した場合、売り手が受取りを拒むことはできません。法定通貨による支払いは法律上、強制的に実行されることが定められているのです。
また、価格が常に変動している仮想通貨(暗号通貨)とは異なり、1,000円札はいかなるときも1,000円分の価値しか持たないところも法定通貨の特性といえます。
1.2. 法定通貨と仮想通貨にある「5つの違い」を解説
ここからは、法定通貨と仮想通貨の違いを5つピックアップして解説します。それぞれのメリットとデメリットを理解するうえで欠かせない基本的な情報なので、ぜひ覚えておきましょう。
違い①:物理的な実体があるか
法定通貨は形あるものですが、仮想通貨には物理的な実体がありません。たとえば1,000円札や100円玉の形は想像できますが、1BTCの形は想像できないはずです。
仮想通貨はインターネット上で成り立つ一種のデータなので、手に取ってみることができない不安感から敬遠されることも少なくありません。しかし、インターネットを媒体として速く、そして安く国内外に送金できる大きなメリットもあるのです。
違い②:偽造への対策の違い
法定通貨の管理を担っているのは銀行や国です。よって、偽造対策を行うのは、銀行もしくは国の役割といえます。
一方、仮想通貨には形がないので、そもそも偽造のリスクはありません。すべての取引履歴が可視化され無数のネットワークで監視されているため、改ざんの危険性もゼロに等しいといえます。
違い③:中心的な管理者が存在するか
法定通貨には、中心的な管理者がいます。日本でいえば財務省や日本銀行などが管理者に該当し、日本円に関する情報やさまざまな決定権を握っているのが実態です。
一方で、仮想通貨には中央集権体制は存在しません。ネットワークによる情報の分散管理が実現されているからです。分散管理によって通貨のあり方が独裁的に決められたり、管理元のトラブルによって通貨の機能が停止するリスクを回避できます。
違い④:発行自体が誰でもできるか
一般的に、法定通貨の発行は政府が担うものです。しかし、仮想通貨の場合は、発行主体が決まっていません。
たとえば、ビットコインは、マイニング(取引データの承認作業)に対する報酬として発行されるものであり、マイニングの実施主体は特定の人物や機関に限定されることはありません。パソコンとインターネットを使えば、誰でもビットコインを発行することができるのです。
違い⑤:需要に対する供給量が決まっているか
法定通貨の場合は供給量の上限はありません。金融政策次第で供給量を増やしたり減らしたりすることができます。
一方、仮想通貨のなかでビットコインの場合は供給量の上限が決まっています(上限がない通貨もあります)。2140年ごろまでに2,100万BTCを発行することが定められているのです。
供給量の増加によって希少価値が生まれるため、1枚あたりの価格が急騰することも珍しくありません。
2. ビットコインを法定通貨にした国・予定している国
ビットコインの法定通貨化を実現した国や今後予定している国は実際に存在するので、本項で詳しく解説します。
2.1. 2021年9月:世界で初めて法定通貨化した国「エルサルバドル」
世界に先駆けてビットコインを法定通貨にしたのは、中央アメリカのエルサルバドルです。すでに国民にビットコインを配ったり仮想通貨ATMを設置したりと、政府主導でさまざまな利用推進策を展開しています。
ただし、リスクが高すぎるとして、国内外から非難の声が上がっているのも確かです。財政危機に陥っているエルサルバドルですが、ビットコインの法定通貨化により国際通貨基金(IMF)との融資交渉も難航しました。
また、米ドルとビットコインの二重法定通貨制度による影響にも今後目が離せません。
2.2. 2022年4月:2番目に法定通貨化した国「中央アフリカ共和国」
世界で2番目にビットコインの法定通貨化を成し遂げたのは、中央アフリカ共和国です。現在の法定通貨であるCFAフランを排除し、フランスの経済的支配から脱却することが大きな目的と考えられています。
議会の満場一致で法律が制定されて以降、国をあげた前向きな取り組みが行われていますが、同国では仮想通貨取引に欠かせない、インターネットがほとんど普及していません。そのため、時期尚早などと批判されたり、より重要な課題が他にあると指摘されたりしているのが現状です。
2.3. 2022年秋ごろ:法案提出予定の国「トンガ王国」
南太平洋に位置するトンガ王国では、2022年秋ごろに法定通貨化に向けた法案が提出される予定です。同国の経済状況は海外送金に依存しているため、ビットコインによる送金手数料の削減により大きなメリットがあると考えられています。
ただし、提出予定の法案はエルサルバドルのビットコイン法をベースに作られているので、エルサルバドル同様、さまざまな批判が国内外から向けられる可能性も否定できません。
法案が可決された場合は年中に試行される可能性も示唆されているため、今後の動向に注目が集まっています。
3. ビットコインを法定通貨化するメリット
ビットコインの法定通貨化にはさまざまなリスクが伴いますが、決して否定的な側面だけではありません。ここからは、法定通貨化によってもたらされるメリットを解説します。
3.1. 海外からの送金時の金銭的負担が減る
銀行を通じて国際送金をすると、一定額の手数料がかかります。しかし、ビットコインを使えば海外からの送金に要する金銭的負担を抑えられます。
国によっては海外送金を行い人々の生活が成り立っていることも珍しくないので、送金手数料の削減は大きなメリットをもたらすでしょう。
しかし、通貨自体の価格が変動するように、今後は送金手数料が上昇していくリスクがあります。
3.2. 国の経済デジタル化の推進
世界にはスマホやパソコンが普及しておらず、経済活動の進歩が停滞している国も少なくありません。
しかし、ビットコインが法定通貨になると、インターネットの利用が日常生活の一部になることが考えられます。その結果、デジタル機器の普及やメディアリテラシーの向上を実現させることができます。
経済全体のデジタル化を加速するために、ビットコインの法定通貨化が大きな役割を果たす可能性は十分あります。
4. ビットコインを法定通貨化したエルサルバドルの今
ここからは、エルサルバドルの現況を解説します。ビットコインの法定通貨化は革新的な取り組みとして世界から注目を集めましたが、国策として成功しているとは言い難いのが現実です。
4.1. 国際通貨基金(IMF)はビットコイン法定通貨化の撤回を求めている
国際通貨基金(IMF)は、エルサルバドルの施策に一定の理解を示しながらも、ビットコインの法定通貨化を撤回するよう表明しています。
金融が不安定になることや消費者保護の視点に欠けること、環境破壊を招くことなどさまざまな負の側面を考慮した結果、法定通貨化の危険性を論文で指摘したのです。
今後の動向次第では国際通貨基金(IMF)との関係性が悪化し、国の将来に大きな悪影響を及ぼす可能性も考えられます。
4.2. 格付け会社「フィッチ・レーティングス」から格下げを受けた
ビットコインの法定通貨化を機に、エルサルバドルは信用状態の格下げを受けました。格付けを行ったフィッチ・レーティングスの影響力は大きいため、エルサルバドルに対する世界各国の評価も少なからず低下したものと考えられます。
格下げの原因は主に、債務返済能力に欠けると判断されたことです。エルサルバドルはもともと財政状況が悪化していました。法定通貨化をめぐって国際通貨基金(IMF)との関係性が崩れてしまったため、資金調達が一層困難な状況に陥っているとの酷評を受けています。
4.3. 国の保有資産がビットコインの価格変動に影響される
エルサルバドルは当初、莫大な資金を費やしてビットコインを購入しました。しかし、ビットコインの価格が半値ほどまで急落したため、多額の含み損を抱えている状況です。その損失額は、国債の利払いに要する額を超えているともいわれています。
さまざまな批判が飛び交うなかでもエルサルバドルは買い増しを行っていますが、国の保有資産がビットコインの価格変動に左右される仕組みは大きなリスクを伴うことに変わりはありません。
4.4. 自国のエネルギーを使い「マイニング(採掘)」を行う
ビットコインを生み出すマイニングは、多くの電力を消費するため環境への負荷が懸念されていました。そのため、エルサルバドルは環境に優しい地熱発電を利用したマイニングを試験的に運用しており、実際にビットコインを入手することにも成功しています。
賛否両論を受けながらもエルサルバドルの国をあげた取り組みが、ビットコインに潜む問題の解決に大きく貢献していることは間違いありません。
5. ビットコインの法定通貨化に関するよくあるQ&A
ここからは、ビットコインの法定通貨化に関するよくある質問について解説します。さまざまな憶測が飛び交っているのが仮想通貨の世界なので、正しい知識を身につけておくことが大切です。
Q1. アルゼンチンがビットコインを法定通貨化するって本当?
アルゼンチンがビットコインを法定通貨化する噂がありますが、2022年7月現在では実現していません。ただし、過去には仮想通貨による給与の支払いを労働者が選択できるようにする法案が議会に提出された事例があります。
今後の動向は不明ですが、アルゼンチンのビットコインに対する関心は比較的高い水準にあると考えられます。
Q2. ビットコインを法定通貨にするリスクは?
ビットコインは価格の変動が激しいので、日常生活の決済で使用するのは現実的ではありません。既存の法定通貨が安定している場合は、あえてビットコインを使用する意味がないでしょう。
また、国が大量のビットコインを保有することになるので、エルサルバドルのように、購入後に価格が大きく下落する可能性もゼロではありません。つまり、国家としての財政難を招く危険性をはらんでいるのです。
Q3. パラグアイでもビットコインは法定通貨化する?
2022年7月現在、パラグアイでビットコインが法定通貨化した事実はありません。ただし、マイニングの合法化と規制に関する法案が提出された事例はあります。
水力発電が盛んなパラグアイは豊富な電力を有するため、大量の電力を消費するマイニング(採掘)との相性が非常によかったのです。今後、法定通貨化に向けた動きが出てくる可能性があるかもしれません。
Q4. ビットコイン(仮想通貨)と電子マネーの違いは?
電子マネーは、企業などが法定通貨とのバランスを見ながら価値を決めるものです。あくまで法定通貨の代わりに使用するものという位置づけです。
一方、ビットコインをはじめとした仮想通貨はマイニングによって新しく生み出されるもので、価格は需要と供給によって常に変動し続けています。
また、電子マネーは加盟店舗でしか利用できないのに対し、仮想通貨はインターネットがあれば理論上どこでも利用可能です。そのほかにも適応される法律が違うなど、仮想通貨と電子マネーの仕組みや役割はまったく異なります。
6. まとめ
現時点でビットコインの法定通貨化を実現しているのは、エルサルバドルと中央アフリカ共和国のみです。一定の評価を得られてはいるものの国際機関から警鐘を鳴らされるなど、大きなリスクを伴う判断であったことは間違いありません。
実際にエルサルバドルは仮想通貨特有の激しい価格変動によって、国の資産が大きく減少する事態に陥っています。また、信用状態の格下げを受けたことも、国家としてのステータスに大きな影響を及ぼしたはずです。
一方で、パラグアイやアルゼンチンのようにビットコインの活用方法を少しずつ模索している国も少なくありません。今後ビットコインの普及が進めば、あらゆる国の法定通貨となることも考えられます。