投資の世界におけるさまざまな「定石」
前項の陰線とは逆に、成長株のチャートで陽線が3本、4本と連続で出て、なかには1週間くらい上げっぱなしになって、ある日上にマドがあくことがあります。これは「買い」のサインです。
また、上にマドがあいて、「十字線」が出ることがあります(図表2)。
1000円で始まって1000円で終わると、十字にはならずに「横線」になります(図表2)。始まり値と終値が同じだからです。十字になるのは、たとえば、始まり値と終わり値がいずれも1000円で、かつ、高値が1100円、安値が900円のようなケースです。
これらを寄り引け同値線といいます。強弱観が対立している時によく出る型と言われています。
これが出たら、攻防の分岐点。ちなみに、1日の動きが極端に狭いケースで出現する「コマ」のような線のことは「極線」と呼ばれています(図表3)。
では、上昇過程で大きくマドをあけて、十字線が出て、翌日陰線が出たケースはどのような意味合いになるでしょうか。これは天井のサインです。
江戸時代の相場師・本間宗久が編み出した投資の法則「酒田五法」では、「放れて十字、翌日安寄り陰線は暴落の兆しあり」とされています。定石を知らないと、「まだ買いかな」と思ってしまいますが、このサインが出たら売らないといけません。私もこれが出たら、売ります。
投資の世界には定石がたくさんあります。将棋の世界に「銀は千鳥に使え」とか「遠見の角に好手あり」といった定石があるのと同じです。そして、将棋の定石を知っていても使えないと意味がないように、投資においても波動の定石を知っていても実際に使えないと意味がありません。
そのためにも、本稿の銘柄を参考に、おもしろいと思った銘柄を、まずは少額で購入して、実体験を繰り返していただければと思います。すべて実践です。水泳の本を何冊読んでも泳げるようにならないのと同じです。
プロ厳選の銘柄で「売り買い」のシグナルをチェック
■ラキール:ニューIPO銘柄、テーマは「DX」
上場後に高値をつけてから、陰線がずっと出ています(図表4)。陰線は3本出たら損切りしないといけません。黒いローソクがたくさん出てきたら、買ってはいけないと覚えておいてください。
実は、最近上場された銘柄の多くは下がっています。2021年12月だけで30社以上が上場しており、供給過多になっているからです。だからものすごい勢いで売られています。言い方はよくありませんが、ガラクタ市のような状態になっているのです。
しかし、なかには「お宝」が紛れていたりします。すべてガラクタと思わず、よいものを探すようにしてください。
ラキールの場合は、2021年8月20日に底を打ってから上昇するも、あまり上がりませんでした。ただ、その後は10月25日(F)でダブルボトムを形成して上昇。2番底を入れて本格的に戻るという法則通りの動きを見せました。
現在は、A→Eの半値押し近辺である2500円を上値抵抗線と見るのが妥当でしょう。そこを抜けることができれば上昇が期待できます。
床1500円、壁2000円のゾーンで見守ります。
■かんぽ生命保険:誰もが知る企業だが、成長株になれる可能性アリ
郵政民営化に伴い、日本郵政公社から「生命保険業」が分離する形で設立された生命保険会社。大株主の筆頭は49.9%を保有する日本郵政となっています。
チャートの段階では、A、Bでダブルトップをつけ押し目、Fで底入れし反騰開始。2000円に下値支持線を引き、上昇第2波があるなら目標値は3000円付近となります(図表5)。
ローソク足チャートで見ると、小さなマドをあけて陽線が連続しています。これは「買い」のシグナルです。「小さなマドをあけて、小さな陰陽線が出てくる」のは、「相場の転換」を表しているからです。白でも黒でも、マドをあけて、陰陽線が出て上がるのは「次に上がるサイン」、下がっていくのは、「次に下がるサイン」です。
ローソク足チャートではコマの形をした「極線」も出ています。これはほとんど実態がない、つまりもみ合っている状態を示しています。「極線」が出現するときは、上がるか下がるかの転換点である可能性が高いので、初心者にとってもチャンス到来です。
しかも、コロナ禍により金融不動産は売られているので、ポストコロナに向けて逆張りするのもいいでしょう。つまり、みなさんのよく知っている企業でありながら、成長株になれる可能性があるということです。
今後は、大企業といえども、DXをしなければ成長できないため、古くて歴史のある企業も「変身」にチャレンジしていくことでしょう。たとえば、銀行が窓口を減らして、どんどんオンラインにシフトしていくトレンドにあるのも、そうした動きの一つと考えられます。
菅下 清廣
スガシタパートナーズ株式会社 代表取締役社長
国際金融ストラテジスト
※掲載されている数字や情報は執筆当時のものです。
※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
※投資にあたっての判断はご自身でお願いいたします。本記事の情報を利用されたことによるいかなる損害も、出版社および著者、幻冬舎グループが責任を負うものではありません。