主要都市の空室率は「1.2%~2.4%の低水準」で推移
さて、直近(2021年4月30日付)のオーストラリア主要都市の空室率は、次の【図表1】のようになっています。
ご覧のように、シドニーで3.1%、メルボルンで4.0%、ブリスベンで1.4%、パースで0.9%、アドレードで0.7%、キャンベラで0.7%、ダーウィンで0.5%、ホバートで0.5%の空室率となり、各主要都市の平均は1.9%となります。
この空室率を見ると、オーストラリアの賃貸市場は、家主に有利な貸し手市場であることが一目でわかります。
興味深いことに、12ヵ月前、新型コロナ発生時期の各主要都市の平均の空室率は2.6%となっており、直近のほうが空室率が低くなっています。よく見ると、シドニーで微減、メルボルンで増加している分、他の都市では空室率が大幅に低下しています。
これは、過去12ヵ月の間、つまりコロナ禍に多くの人が大都市圏を離れて他都市に移住したと考えられます。実際のところ、筆者が住むクィーンズランド州では、2020年の他州から流入者(移住者)は30,000万人程度、ゴールドコーストの空室率は1.3%前後となっており、賃貸物件が足りない状況です。
この状況が単なる一過性の現象である場合、安定した不動産賃貸事業の継続に疑問が残ります。この点については、過去のトレンドを確認することでシナリオが推測できます。
【図表2】は、オーストラリアの主要都市における過去15年間の空室率のトレンドです。
ご覧の通り、空室率は1.2%〜2.4%の幅で推移しており、やはりオーストラリアの賃貸市場は家主に有利であることが確認できます。この間、不動産売買の市場において価格変動はありましたが、賃貸市場は常に平時であったことがわかります。
一時期、新型コロナが発生した時期に都市部において内外の観光客向けに宿を提供していた物件(日本でいう民泊に類似)が国境と州境の封鎖、そしてロックダウンのタイミングと共に一気に賃貸市場に出回った時期があり、都市部によっては空室率が2桁台まで急上昇するという例外もありました。
その後感染拡大が収まり、コロナ対策の規制(人の移動等)が緩和されると賃貸市場は落ち着いて、現在の水準になりました。
さて、この記事のはじめに、オーストラリアの不動産投資の基本的なスタイルは「安定した賃貸事業収益」ありきで、「価格は国の成長と共にあとからじわじわと付いてくるもの」という保守的なスタンスでのアプローチがメインとお伝えしました。
しかし、そうは言ってもなかなかイメージができないと思いますので、最後に簡単な数字で示しておきます。
たとえば、$500,000(約4,200万円※)の不動産を購入したとします。当地の不動産の実質利回りは過去10年間において大体3%というのが相場です。家賃の上昇率も3%程になりますので、たとえば10年間賃貸事業を行なった場合、①家賃収入は10年間で累計$172,000(約1,445万円※)程になります。
11年目の年間の家賃が$20,159(約169万円※)となり、その家賃を実質利回り3%で割り戻すと、②還元額は約$672,000(約5,645万円※)程となります。したがって、①と②を足すと合計で$844,000(約7,090万円※)程となります。
※1$=84円で計算
この金額が期待値に沿うものか否かは投資家のスタンスによります。しかし、オーストラリアの不動産投資は投資額に対するリターンがイメージしやすく、やはり安定した賃貸市場が存在している証拠であると言えます。
砂川 盛作
株式会社ワイドエステート 代表
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